俺は人付き合いが得意じゃない。自分から誰かに話しかけるのは苦手だし友達はいない。無理してまで誰かと一緒にいたいと思わなかったから一人で居るのは辛くなかった。俺が唯一普通に話せる相手は母。そんな俺の気持ちを母には話していた。母は俺の気持ちを理解してくれて無理しないで良いと言ってくれた。その上で自然と付き合える人を探せば良いと。「あんたはお父さんに似てるわ。お父さんもあんたと同じで人付き合いは苦手だって言ってたけどお母さんと結婚してるでしょ?だからあんたも大丈夫よ」そんな根拠が有るような無いような事を言って俺を励ましてくれた。「正直言って誰かと付き合える自信は無いけど…彼女が欲しいって気持ちはちょっとだけあるかな?」「なら大丈夫よ。どんな子が良いの?」俺の世界は90上、母と俺だけだから基本的にどんな事でも話が出来た。照れずに何でも話せたし、母も俺にどんな事でも普通に聞いてきた。普通の母子に比べれば距離感はかなり近いと思う。「強いて言うならお母さんみたいな。美人だし話しやすいし。お父さんが好きになったのも分かるよ」「マザコンねぇ…悪い気はしないけど」冗談半分で言った俺の言葉に母はとても嬉しそうだった。その日から母の俺への距離感がより近くなった。一緒に歩いていると急に恋人同士の様に腕を組んできたりテレビを観ていたら体が触れる距離で横に座るようになった。休日の度に俺を誘ってどこかに出掛けたがった。「恋人できた時に色々経験してなかったら困っちゃうでしょ?彼女が欲しいって少しでも思ってるのが分かったから。お母さんで練習しとけば良いかなって」普通なら母親とのデートなんて、そう思うかもしれない。でも俺は嬉しかった。そして楽しかった。そんな日々を過ごす中で俺と母の距離は少しずつ、更に近くなっていった。俺の中でも母に対する気持ちが変わっていった。自分自身の気持ちの変化に戸惑いながらも、冗談半分で言ったあの台詞が本気になっていくのを感じていた。そろそろ寝ようかな、そう思いながらリビングのソファに座ってテレビを観ていた俺のそばに母が近寄って来た。不意に横に座った母の体温を感じた。俺の頬に柔らかい何かが当たる感触がした。驚いて母を見るとすぐ横に母の顔があった。「ビックリした?おやすみのキス」笑顔で俺にそう告げた。俺は確かに驚いた。でも驚く以上に何か、ここは動くべきタイミングじゃないかと感じた。「…急でよく分からなかったからもう一回」勇気を出した俺の一言に母は少し不満げな表情の後、また俺の頬にキスをしてくれた。薄いパジャマ一枚に包まれた母の体が俺の腕に触れる。「これで良い?」「じゃあお返しに俺からも」「…はい、どうぞ」少し照れた顔の母は俺に向かって頬を向けた。「ちょっと照れ臭いから目、瞑って」「…わがままねぇ」軽く文句を言いつつも母は目を閉じた。俺は母にキスをした…唇に。「えっ…」頭を後ろに反らせるようにした母の動きで俺と母の唇が離れる。それでもその距離はほんの少し。再び唇が触れる。固まる母に今度は俺の方から離れた。「…ごめん。どうしてもお母さんとキスがしたかったんだ。ごめん」「なんで…」「お母さんの事…大好きだから」少しだけ無言の時間が過ぎた。「わかった…ありがとう、嬉しいよ…おやすみ」そう言って母は寝室に向かった。俺は後悔したくなかった。
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