「親父のことで話があるから」と言って、外に連れ出したのは深夜も零時を
回った頃だっ
た。
八歳も違えば、意外と素直に言うことをきく。
ましてや、十六歳で家を出てから十年ぶりに会った兄の姿に、サチは少なか
らず頼もしさを感じていたのかもしれない。
すっかり弱ってしまった親父と年老いたお袋と三人きりで生活していてサチ
にしてみれば、将来に多少なりとも不安はあっただろう。
そこに、まったくの音信不通だった兄貴が帰ってきてくれたのだ。サチは内
心ホッとしていたに違いない。
だから、俺の言ったことに素直に従った。
色黒の少年のようだった娘が、すっかり女らしくなっていることに正直驚い
た。
まだ高校生ではあったけれど、身体は立派なものだった。
不意にその考えが芽生えた理由はわからない。
サチに会うまでは、妹に欲情するなんて思ってもいなかった。
だが、いったん生まれた妄想はどんなことをしても消すことは出来なかっ
た。
里帰りした二日目の晩には、もうサチをホテルに連れ込んでいた。
「ふたりきりで静かに話せるところがいい」
もっともらしいことを言ってはみたけれど、サチには薄々わかっていたのか
もしれない。
行きの車中で、初体験の話を根掘り葉掘りと聞いていた。だから、サチはこ
れから起こることに気付いていたのかもしれない。
それでもサチは、素直についてきた。
「何の話?」
訝しげに訊ねられたけど、話す言葉なんて何もなかった。
ベッドに腰を下ろして、隣に座らせた。
奇妙な沈黙が続き、おもむろに唇を奪いにかかった。
サチが俺の胸を突いて逃れようとしたのは、ほんのわずかの間だけ。
すぐに身体の力を抜くと、後は俺のなすがままになっていた。
夢中で服を脱がせて裸にしていった。
前技なんざほとんどせずに、サチの中に押し込んだ。
寸分の隙もなくやわらかく包み込んでくる肉洞にたまらず呻いた。
サチは俺にしがみつきながら、可愛らしい声を出していた。
終わると、ぼんやりと天井を見つめながら泣いた。
「お父さんに、言わないよね。」
言える筈なんかない。
すぐにおそってきた途方もない罪悪感。
もう、二度としないと心に決めたのに、一時間後には再びサチに跨ってい
た。
サチはどんな体位も嫌がらなかった。口を使うことも知っていた。
「お兄ちゃんが一番気持ちよかったよ。」
ふたりで湯船に浸かりながら、サチはそういって笑った。
あれから五年。親父は鬼籍の人となり、お袋は長い闘病生活を送っている。
俺は地元に職を見つけ、サチは市の職員になった。
家には、それぞれに部屋を持っているけれど、サチは決まって俺の部屋で朝
を迎える。
さすがに毎晩とまではいかなくなくなったけれど、それでも週末はサチを
縛って夜更けまで遊んでいる。
股間の恥毛はすっかり消え失せ、形のいい乳房の頂点にはリングピアスが鈍
い光を放っているから、すぐには恋人も出来そうにない。
それでも年々色気が増しているせいか、サチに魅了されている男は何人かい
るようだ。
もうすぐ年越しだというのに今夜は連絡もせずに帰ってこない。
携帯に電話ひとつよこさない。
帰ってきたら、たっぷりと虐めてやろう。
そして洗いざらい吐かせてやる。
でも、どこかホッとしている自分も、確かにいるんだよな。