父と姉と俺の三人家族。母の記憶は無い。7歳離れた姉が母代わりだった。
小学6年まで、俺と姉、襖隔てて父が寝ていた。夜中に姉がいない事があった。
父が寝てる部屋からボソボソと『真澄イクょ』 ぁッ、ぅッ、ぃッ…等、父と姉の小さな声。何度となく聞こえていた。幼な心に…見ちゃダメ!聞いちゃダメ!…覗きも尋ねもしなかった。
秘め事には何も触れず日々が過ぎ、高3の終わり。 姉も高卒就職で、俺も見習い、就職が決まった。就職先の寮に入るため、家を出る前日の昼。 荷物の整理を姉に手伝ってもらっていた。
初めて、父との事を姉に問うた。バレているのは分かっていたと言うが、詳細を話さない姉。俺が泣いてしまった。『悩んでたんだね…ゴメンね‥ゴメンね』と姉が繰り返し言う。泣いて、なぜかスッキリしたので『俺の方もゴメン』と片付けを続行した。姉は微笑んでいた。
その夜、俺の門出の祝い、家族三人で食事。寡黙だが厳しく優しい父と、優しく頼れる姉と、ごく普通の家族三人として。
珍しく父が酔っ払い、大イビキで早々就寝。『俺が居なくなるのが寂しいのかな? 嬉しいのかな?』なんて冗談まじりで少し姉と会話し、それぞれの部屋で就寝。
積み上げた箱、布団だけ敷いた俺の部屋。寝付けず、一発オナでもと、隠してたエロ本を引っ張り出し見ていたら人の気配。姉が来た。エロ本は自然に隠せるが、下半身はメチャ不自然…てか自然か…。
『小さい頃、ずっと一緒に寝てたよね』と姉。もぅ言葉は不要だった。
柔らかく温かい姉の身体。一つの小さな布団の中で『大人になったね』との姉の言葉が心に染みた。
翌朝、微笑む姉と、『忘れ物は無いか?』と尋ねる父に頷き、家族の秘密を置き忘れて家を出た。