和美さんの部屋は小奇麗に片付けられていて、余計なものは一切置いて
いなかった。
ソファに座らされ
「楽にしてくださいね」
と、優しく言ってくれたので言われたとおりに。
和美さんは、冷蔵庫から缶チューハイを2本取り出すと、一本を俺に
手渡してくれた。
「さっきのバーのカクテルには程遠いけど(笑)」
「いえ、これで十分。ありがとう・・・」
自分のテリトリーだからだろうか?和美さんは、バーにいる時より
よくしゃべった。
お互い会話に夢中になり、気付くと既に時間は3時を回っていた。
「あらっ!もうこんな時間・・・大変!」
「あぁ、もう3時ですね、眠くないですか?」
「私は平気だけど・・・ケンちゃんは?」
「いえ、すっかり目が冴えてます(笑)」
「明日はお休みでしょ?」
「えぇ、そうです。明日って言うか今日は特に予定もないですし」
「じゃあ、夜更かししても平気ね^^」
「そうですね」
「でも、あまり長く引き止めたら迷惑かしら?」
「そんなことないですよ、楽しいし・・・」
「これから帰って寝るのもアレでしょ?」
「アレって?」
「面倒でしょ?(笑)」
「まぁ、そうですね」
「よかったら泊まってかない?」
「えっ!?」
まさかの提案だった。
もちろん断る理由などない。
「じゃあ、そこらで雑魚寝しようかな?」
「それはダメよ、ケンちゃんはお客さんなんだから、よかったら
私のベッド使って。私はソファで寝るから」
「そんなのダメですって、和美さんの部屋なのに」
「じゃあ、一緒に寝る?(笑)」
「狭くないですか?」
「う~ん・・・セミダブルだけど、くっついて寝れば大丈夫よ」
まるで夢のような話だが、和美さんの話し方とその様子から察する
に、下心的な感じはしない。
セックスすることは全く眼中にないように感じた。
しかし、いい大人の男女がひとつのベッドに・・・。
なにかしらのハプニングが起きるに違いない。
「それじゃ、お言葉に甘えて・・・」
俺は照れ笑いした。
「じゃあ、シャワー浴びる?そのままじゃ嫌でしょ?」
和美さんはそう言うとそそくさとバスタオルを出し、俺に差し出した。
「友達が泊まったときのために使い捨ての歯ブラシも用意してある
の、使ってね」
間髪入れず、俺に言葉を発する暇も与えず、バスルームへ押し込め
られた。
そして俺はシャワーを浴び、歯を磨く。
居間に戻ると和美さんはニコニコしながら、寝室の引き戸を開け
「狭いかも知れないけど、先に寝てて・・・私もシャワー浴びてくる
から・・・」
と、言い残しバスルームへ向かった。
初対面の女のベッドに潜り込むのはドキドキする。
シャワーから出て、少し迷ったが取り合えずジーンズは穿いていた。
しかし、ベッドに潜る前にそれを脱ぎ捨て、パンツとTシャツでベッドに
上がった。
布団に潜り込み、心臓の高鳴りを感じながらゆっくり深呼吸した。
瞼を閉じる。
しかし、緊張なのか膨らんだ期待感からなのか、全く眠気は感じ
ない。
和美さんがシャワーから上がり、隣に横になった時のことを想像し
たがその先のことは全く予想できない。
やがて遠くから聞こえるガス湯沸かし器の稼動音が消え、バスルーム
のガラス折り戸が開く音が微かに聞こえた。
間もなく和美さんがやって来る。
ドライヤーの音がしばらく聞こえ、それも途絶えた。
いよいよだ・・・。
ひたひたと足音が近づいてきて、居間の電気が消され豆電球だけに
なる。
和美さんは枕もとの電気を付けてベッドの傍らに腰掛け、なにやら
化粧水らしきものを肌のケアをしているらしい。
俺の存在を意識しているのかいないのか・・・?
その電気も消されると、和美さんが布団に潜り込んできた。
もうこの先会話はなく、二人共眠りに落ちるのだろうか?
少なくとも俺には無理だ・・・。
「ケンちゃん?」
「ん?」
「まだ起きてた?起しちゃった?」
「うん、まだ起きてた」
「そう・・・眠れない?」
「う、うん・・・」
そして静寂。
真っ直ぐ体側に付けた指先が落ち着きなく動き、和美さんの方へ
伸ばそうかどうか戸惑っている。
「眠れそうですか?」
そう聞いてみた。
「うぅん・・・こうして目を閉じていれば・・・」
再び静寂。
俺の心臓の鼓動が聞こえるのでは?と、一瞬心配になる。
それどころか股間が膨らんでいる。
和美さんのあの指先がそこへ伸びて来てくれないだろうか?
益々ドキドキした。
突然、和美さんが寝返りを打った。
俺は目を閉じていたので、どちらを向いたかわからない。
しかし、耳を澄ますとすぐ横で和美さんの呼吸する息を感じた。
こっちを向いているのだ。
瞼を開いて和美さんの方を見ると、可愛い寝顔がすぐそこにあった。
45歳って言ってたっけ?
薄暗い中で見るスッピン顔は、化粧の時とはまた違う魅力を持って
いた。
意外に童顔なんだな・・・。
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