第046話【オヤジさんの願望】
この一週間の美樹の行動や出来事などを聞いて、自分のこの一週間の出来事などを話ししているうちに温泉旅館には到着してしまいます。
ここの温泉の親父さんは土曜日のこの時間の俺の車には、彼女が…彼が言うところのスーパーボインちゃんが乗っている確率が高いことを知っています。
俺の車をフロントから見つけたのであろう彼は、いそいそと外に出てきました。
「よ。いらっしゃい。久しぶりだな。アツキくん待っていたぞ。」
(よせやい、親父さんが待っていたのは俺じゃあなくって、美樹だろうよ。)
と、言いたいところですが、そのセリフは呑み込みました。
「おお。彼女ぉー。いらっしゃーい。久しぶりだったねえ。ほら、部屋の鍵、渡しておくねえ。
あ、それと、冷蔵庫のジュースは何を飲んでもいいからね。今日は、おじさんのおごりだからねえ。」
はあ、呆れます。溜息も出ます。口からエクトプラズムまで出てしまいそうです。
何じゃあ?前回俺がひとりで来た時とのこの違いは…それと、なんじゃいそのデレデレは…
私は、先に美樹を和室に行かせて、ロビー横のトイレに入ろうとしました。
そこに親父さんが刺さり込んできます。
「よう、アツキくん。こんなこと言うのもなんだけれどよお?……」
「何さ?」
「いやあ。この間みたいなことあるのかなあってな。ははは。」
「事前に部屋まで準備して、ジュースまで冷やしていたってことは期待していたんでしょ?」
「ま、まあな。あれ以来、金曜日の夜には、あの部屋の冷蔵庫にジュースいっぱい入れて冷やしていたんだよ。でも、来ないんだもの。お前。」
「はあ。はいはい。わかったよ。親父さんの情熱は。美樹に言っておくよ。」
「へへっ。そうこなくっちゃなあ。今日は後で、部屋に昼飯も届けるからよ。」
俺は、やれやれと呆れた顔つきをしています。今日のオヤジさんは、やる気十分です。
私は、トイレを済ませ、風呂道具 アルファも持って美樹が待つ、客室へと歩みを進めたのでした。
「アツキさん、遅かったですね。」
そう言いながら、美樹は俺に近づいてきてこの身に抱きついてきます。
「アツキさん。私、今、バラバラになりそうなんです。お願いしますから、しっかりと抱いてください。」
彼女のほとんどノーブラ状態の胸を押し潰すように、ギュッと固く抱きしめます。
「アツキさん、そのまま、そのままでちゅーですよお。」
悪戯っぽい視線を送ってきます。
相変わらず積極的な子だなと思いながらも、俺は、美樹のこの視線と切ない時に出す何とも言えないあの目つきがたまらなく好きなのです。
本当に、この奥さんは魔物です。俺が、コントロールしているのか、はたまたされているのか時々わからなくなることがあります。
とにかく、この場は、彼女の唇に私の唇を重ねます。
「さあ、まずは、ざっと風呂に入ってくるか?」
彼女とかなり長いキスをしていましたが、唇を彼女から話してひと呼吸おいてからそう言ってみました。
「そうですね。行きましょう。」
まずは、冷蔵庫に入っている親父さんが用意してくれたジュースを3本持ち出しました。
あとは、フェイスタオルとバスタオルに大きめの洗面道具入れです。
ただ、この洗面道具入れには、美樹が大好きな例のアヌス兼用ディルドを朝仕込んでおきました。
それらを持って、私たちふたりは廊下へと出て、ロビーまでの長い階段を進みます。
ロビーで私たちを待っていたのは、誰でもないオヤジさんでした。
「アツキくん、風呂か?」
「ええ。まずは軽くって思って。」
「そうか。」
「ところで、親父さんって、暇なの?」
「暇ってなんだよ。馬鹿にして。これでも忙しい時は忙しいんだよ。」
「で、今は?どうなのさ?」
「あ?まあ、今は、特に忙しいってわけじゃねえよ。」
「また、風呂に入りに来るの?」
「ああ、そのくらいの時間は作れるかもな。」
「それなら、後から入って来るんじゃなくって、最初から一緒に入ればいいじゃん。」
この段階で、美樹はかなり覚悟していたと思います。間違いなく、混浴風呂での露出が待っているものと。
「そっか。でもよ、いいのか?」
親父さんは美樹の同意を求めたいような質問を我々に…いいえ、恐らく美樹に投げかけたのだと思います。
「美樹は、どう?別に構わないよな?」
それを受けて、俺は、美樹にその質問を流します。
「え?あ、わ、私はいいですよ。」
私が良ければ全て良しなのは火を見るより明らかなのですが、美樹としても断る理由がないのです。いや、断れるわけがないのです。
「ああ。じゃあ、今行くか?」
親父さんは、早足で、フロントもどきの一角に入ると、そこからタオルを一枚取り出し、すぐ駆け寄ってきました。
「準備できたよ。行くか。」
「じゃ、いくか。美樹。」
三人は、露天風呂までの長い廊下を歩きました。途中に内風呂に入る男女の浴室入口がありますが、そこはスルーです。
その廊下の先から裏庭に出るような扉があり、それを開けると外に出るのですが、更に露天の脱衣室までのスロープが続きます。
そして、男女の脱衣室が分かれているスロープの突き当りに着きました。
親父さんは先に男性の脱衣室に入っていきます。
美樹はいつものように左側の女性脱衣室の扉を開けて入ろうとしていましたが、その手を掴み、美樹の行動を止めてから、美樹の顔を見つめて首を横に振ります。
「え?」
どうしたの?そのような疑問を表現している美樹の視線を感じながらも、それを直視し、こう言います。
「美樹。今日は思い切って、こっちで着替えようよ。」
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