第029話【美樹品評】
さて、話を進めますが、その若い女性を品定めしていた審査委員の一人が、お兄ちゃんの視線が固まっていることに気がつきました。
そして、それを周囲の他の審査員に目で合図して伝達します。
その後の彼を待ち構えていたのは、審査委員のオヤジ達の嘲笑でした。
クスクスとその兄ちゃんの視線が動かないことを見て笑っています。
ところが、周囲の者がその兄さんの事を笑っていても、彼はそれにすら気がついていないようです。
審査員のオヤジのうちの一人がいきなり彼に話しかけます。
「おいおい、兄ちゃん。女湯がそんなに珍しいのか?」
若い兄ちゃんは、そこで初めて「はい?」と答えると、周囲をキョロキョロと見回し、初めて自分が注目されていたことに気がつきました。
あははははと愛想笑いをしてその場をごまかそうとしますが、やはり女湯が気になるのかオヤジ達の方を見ながらも、そちらにチラチラと視線を投げかけていました。
もう、この頃には先程の若い女性は湯船にはいませんでしたが、いつ誰が入ってくるかと見張っているようなものだったのかもしれません。
その時です。
審査員席から「でか!」っと誰かが叫んだ声が聞こえてきました。
そうです。美樹が胸を一切隠さずに湯船の中へと入ってきたのです。
相変わらずいつ見ても魅力的な先端が尖ったお乳です。私にしてみれば当然なのですが、今、男湯にいる男性陣の注目の的となっています。
こちらとしては、ドキドキものです。
なにせ、最後尾にいた俺の位置からでも美樹が湯に浸かるまでの間は彼女の巨大な横乳が丸見えでしたから。
「あれ誰だ?誰か知っている奴いるか?」
「いや知らん。どこからか来た姉ちゃんだろう?」
「すげえでっかい乳だな。」
「でかいくせに全然垂れていねえな。」
「若いからだろ?乳首がツンッって上向いていたぞ。」
相変わらず審査員のオヤジ達は好き勝手なことを言っています。
(本当にそこまで見えたのかよ。この短時間で…)
湯船に浸かっていたオヤジ達は色々な事を言いながらも女湯との境付近に集まりだしたのでした。多分、湯から上がる時の美樹の裸体をもう一度覗き込むためだと思います。
そのおかげで、私は「あ1」の位置から「あ2」の位置にまで移動することができました。
例の兄ちゃんはやはり視線が固まっています。女湯一本槍です。
ところが、予想もしないと申しましょうか、オヤジ達にとっては幸運な事が起きました。
そのオヤジ達の民族大移動にタイミングを合わせるがごとく、美樹も動き始めたのでした。
それまでは、見取図の「美1」辺りを外の庭園に背に向けて女性洗い場の方に向かって湯に浸かっていたのですが、いきなり立ち上がり、直角に男湯の湯船の窓に向かったかと思うとその位置で湯船の縁に座ったのです。
タオルは、少したたんで、頭の上に乗せていますので、胸も股間も一切隠してはおりません。股間はともかく、窓の傍に集まっているオヤジ達に向かって正面からおっぱい丸晒し状態なのです。変な歓喜の声が男湯を包み込んでいました。
「あーもうちょっと脚広げればマンコまで見えそうなんだがな」
「若い姉ちゃんのくせに大胆だな。女しか見ていないって思っているからか?」
「そもそも、女同士って隠さないのものなのかね?」
そんなセリフまで聞こえてきます。
数分、美樹はそこで半身浴をしていたと思いますが、その後一度湯に浸かり、洗い場の方へと戻っていきました。審査員のオヤジ達の落胆のため息が聞こえるようでした。この段階で私の心臓はバクバクものだったのは言うまでもありません。
審査委員のようなオヤジ達の存在、そこそこいた女性客達、そして美樹、この偶然な組み合わせが今の状況を生んだのでした。
美樹が洗い場の方へ移動してから暫くは、どの女性も湯船には入ってきませんでした。
もっとも、湯船に入っても庭園を中央の位置から見ることができない洗い場側にいたとすれば男湯からはなかなか見えないので、ここから見える範囲内にいなかったというだけなのかも知れません。
さて、女湯がそのような女日照り状況になりましたなら、またオヤジ達の標的の的は先ほどの若いお兄ちゃんになります。彼の視線は相変わらず女湯が覗ける位置で固定されているようです。
「あの兄ちゃんの眼、相変わらずあそこで止まっているよなあ。」
審査員のオヤジのひとりが近くにいた私に声を掛けてきます。
「あ、ああ、そうですね。珍しいからじゃないですか。こういう所が」
とりあえず、私は当たり障りの無い答えを返します。
「おーい、兄ちゃん。大丈夫か。」
「じっと見つめていても、女は出てこないぞ。」
等と、直接その兄ちゃんを揶揄する言葉を発するオヤジもいます。そして遂には…
「お前、童貞か?女の裸見たことないのか?ケケケケケ」
と彼を小馬鹿にしたような口調で酷い台詞を吐く輩まで現れました。
さすがの兄さんもこの言葉に腹を立てたのか、それを聞くとムッとした顔つきに変わり、無言のまま湯船から上がったかと思うと、体をタオルでパパパっと拭くとすぐ出て行ってしまいました。
「あはははは。図星だったのかな?あの兄ちゃん」
「いやあ。もう、女は来ないと踏んで帰ったんじゃねえのか?」
「来ねえわけないよな?」
「短気は損気ってな、こんな事で怒って出て行ったらいいもの見れねえんだよ。可哀想に」
「さっきのデカパイ姉ちゃん、もう一回出て来てくるかもしれねえのにな?」
相変わらず好き勝手なことを言っています。
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