第013話【美樹のストーカー】
さて、いつも待ち合わせ場所にしていた公園の駐車場でしたが、前回二人で会った際に、この場所で美樹の旦那の友人が(偶然にらしいのですが…)彼女の車を見つけてしまっていたようです。
まあ、いくらお忍びだったとはいえ、半年間もほぼ毎週土曜日の待ち合わせ場所として使っていれば、その様子を見て不審がっている人もいますよね。
既に舞い上がっていた私たちは、警戒心を解いてしまい、そんな簡単なこともわからなくなっていたのかも知れません。
美樹が毎週土曜日の昼にその公園にいるらしいという話は、旦那の友人から、旦那さんへと伝わったらしく、彼女はその不可解な駐車についての理由を問われたそうです。
でも、美樹は美樹で、そういう事が発生するケースも事前に予感していたらしく、理由はきちんと考えていたようです。
旦那や旦那とも仲の良い彼女の友人たちには、土曜日は、実家へプチ帰省をしている事をそれとなく伝えていたそうで、実際に私との逢瀬の前に実家に行ったり、実家に人がいない事を予測して、時間を偽ったメモを投函したりなどと、かなりの小細工をしていたようです。
ですから、この実家の行き帰りの際にこの公園に寄って、時間つぶしなどをした事はあるけれど、「そもそも毎週なんて行くわけがないでしょう?」とシラを切り通したようです。
また、私たちは、駐車場が見渡せる四阿にいたので、そこに入って来る車などはチェックできていたし、今考えれば、美樹はそういう車輛をチェックしていたような気もしました。
平日に交わされていた定期通信メールにそのようなやりとりが詳細に書いてありました。
そして、メールの最後には、「見張られている可能性があるから、会う場所を色々変えたい」とも記載されており、事前に合う場所の打ち合わせをしておきたいという提案がされました。
「見張られている可能性ってなんだ?」と思いながらも、当然私は、その意見に賛成しました。
次の週、私は大型スーパーの屋上駐車場にいました。彼女は、スーパーの屋外にある青空駐車場に駐車してそこから、店舗を廻り屋上駐車場の出入り口に出てきました。
事前に私が屋上駐車場のどの場所にいるのかは電話にて報告済みでしたので、私の車に向かって一直線に歩いてきます。
そして、彼女が車に乗るや否や、私は車を発進させ、その屋上駐車場から逃げるように出て行きました。
「メールで見たけれど、旦那さん大丈夫だったのかい?」
こんな私の問いに…
「大丈夫、大丈夫!こんな事もあるかも知れないって、普段から、予防線張っていましたから。」
「でも、あの公園の駐車場がチェックされていたのには驚きました。駐車場に入って来る車は気にしていたから、怪しいのは無いかな?って思っていたのですけれど…」
「怪しい車?」
「ええ。あの人、うちの実家の近所に住んでいて、子供の時から知っていて、旦那が、親友って言っている奴なんだけれど…子供の時から、何か、気持ち悪い奴なんですよね?」
「前にも私の行動を旦那に告げ口したことあったのね。美樹ちゃんは、最近図書館で本を読んでいる事多いとか、どこそこで買い物していることが多いんだね?なんて事を旦那に言ってみたり?あと、コンビニのバイト始めた初日に、いきなり来たんですよ?旦那に聞いても、事前にはそこに私が勤めるなんて言っていなかったって言うのに。とにかく、普段から、気持ち悪い人なんですよ。もう、今回も旦那にその事を言われた時、鳥肌が立ってしまいましたよ。」
と、その時のことを思い出しながら、それまでの彼女からは感じたほどがなかったほど、珍しく怒りながら話をしていました。
私はそんな話を聞いて、ひょっとすると、その彼も、幼少の頃から美樹のことが気に入っていたのではないか?旦那の隙があれば、狙っているのではないのか?などと良からぬ想像をしていましたが、ストーカーかもしれないよと言ってしまうと、彼女を怖がらせてしまう可能性もあるので、そこには触れずにいました。
にしても、そういう男がいるのだという認識を常にして、あらゆる対策を組まなくてはいけないなと考えておりました。
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