彼から告白された日のことをはっきり覚えています。
それは、雨がひどく降っている日でした。その日は息子を塾に送った帰りのことでした。立ち寄った本屋で雨宿りする彼にばったり会ったのです。雨もひどいことですし、彼を車に乗せて家まで送っていくことにしました。
彼の家までは15分程ですが、その間、世間話をしながら時を過ごしました。
家の前に到着して、彼は車から降りようとした時です。彼は私に「今日は、おしゃべりできて楽しかったです。」とニコニコして言ってきました。
「こんな、おばさんなんかで申し訳なかったわね。」と私が言うと、「おばさんは、『おばさん』なんかじゃないですよ。きれいですから」と彼。
「でも、今私のことおばさんって言ったじゃない。」
子供のころから私のことをおばさんって呼ぶんです。
中年のおばさんという意味ではないのでしょうけど、子供にとっては年上は、みんなおばさんなんですよね。
彼は真面目な顔をして、
「じゃー、今日からはおばさんのこと、あやさんって呼んでいいですか。」と聞いてきます。
「恋人じゃないんだから、あやさんなんてね。今まで通りおばさんでいいわよ。」
「恋人のように、あやさんって呼ばせてください。」と言いながら、シフトレバーを掴んでいた私の手を、ぎゅっと彼の手が握ってきました。
「僕、前からあやさんのことが好きでした。」
「困るわ、そんな……。」
何か言おうとすると、彼はチュッと私の口唇に軽くキスをしました。
「あやさん、今日はありがとうございます。楽しかった。」と言って、車から降りて行きました。
私は結婚してから初めて、夫以外の男性に告白され、キスされてしまい、ドキドキしていました。
これからどうすればいいのか、不安もあり期待もありました。
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