借りた傘は黒くて大きくて、毎日持ち歩くのは無理でした。
いつ返そうか悩んで、次にバス停で会った時に話しかける事にしました。
数日後、バス停で並んでいる彼を見つけると駆け寄りました。
「おはようございます」
「おはよう」
少し眠そうな目で私を見ました。
「この間はありがとうございました」
「うん。いいよ」
「傘、いつ返したらいいですか?」
「いつでもいいよ」
「じゃあ、今日の夜7時にコンビニで待ち合わせますか?」
「いいよ」
「じゃあ、今夜」
列から抜ける私を彼は引き留めました。
「どこ行くの?」
「横入りになっちゃうから」
列の最後に並び直した私を振り返えり、手を小さく振りました。
就業時間が終わると、一目散に帰宅して化粧を直して着替えて下ろし立ての香水をつけました。
上半身は甘い香り。
下半身は濃厚な香り。
私は、彼を意識してました。
傘を持ち、少し前にコンビニに向かいました。
着くと、彼はもう待ってました。
「待ちました?」
「下に来ただけだから」
視線を絡めてから傘を渡しました。
「ありがとうございました」
「いいえ」
ちょっと沈黙しました。
今日は誘ってくれないのかな…
モジモジしてると彼が遠慮がちに口を開きました。
「また誘ったらしつこいよね?」
「あ…時間あります…」
「大丈夫?」
「はい」
「お酒飲む?」
コクッと頷くと、彼はコンビニでワインと酎ハイを買ってくれました。
一旦外に出て脇のエレベーターで上にあがりました。部屋に入ると綺麗に片付いてました。
「いい部屋ですね」
「もしかしたら来てくれるかと思って片付けたよ」
「私も着替えてきた」
「一緒だね」
ふふふと笑って彼がお酒の用意をしてくれました。
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