歌舞伎町さくら通りの、あるバーの入り口に着くと、もう武威はそこにいました。
「るか!来てくれるか心配だった」
とても嬉しそうに、すぐに私の手を繋いで、私もそれが当たり前のように受け入れました。
「どこへ行く?」
と私が聞くと、武威は少し気まずそうに
「るかを抱きたいが…一睡もしてなくて眠い」
と答えました。
決して背は高くないけど、筋肉質で強面。
歳だって38歳。私より15も上なのに。
そんな彼から「抱きたいけど眠い」なんて想定外の答えを聞いて、「この人ってなんて正直でかわいいんだろう」と、愛おしく感じてしまいました。
「いいよ、ホテル行こ。私も眠い。一緒に寝よ」
ホテルに着くと、本当にふたりともすぐにベッドに倒れ込んで、キスもせず彼の腕の中で私もぐっすり眠ってしまいました。
3時間ほどで、武威が煙草を吸う匂いで私も起きました。
「るか、我爱你。でも話しておかないといけないことがある」
と彼が切り出しました。
おそらく彼の「職業」のことなのだと直感しました。
「俺は、堅気ではない」
「わかってる」
「ヤクザではない」
「わかってる」
「右翼とかでもない」
「うん」
「なんだと思う」
「わかってるけど私からは言わない」
少しの沈黙があって、彼が水をひとくち飲んで、目を伏せたまま言いました。
「Jという組織」
「聞いたことある」
「犯罪ばっかりだ」
「知ってる」
「初めて会ったときいたマオの人は俺のボスだ」
「うん」
そしてまた少しの沈黙のあと、武威は顔をあげて続けました。
「るか、我爱你、るかは?」
「私も武威さんのこと大好きだよ」
「真的吗?」
「え?」
「本当に?」
「本当だから今日ここにいる」
「俺の女か?」
「うん」
そうしてこのとき、初めて肌を合わせました。
※元投稿はこちら >>