そして、出張する時が来た。
早朝の新幹線に乗り、車内では、たわいもない話をし、時間をつぶし、駅弁を食べ昼寝した。
午後、○○工業の最寄り駅に到着、社用車にて○○工業に到着すると、夏に訪問された業務課長
と係長が迎えてくれ、互いに笑顔で挨拶を交わした。
初日に商談を済ませ、夜は歓迎会を開催してもらうが、移動の疲れもあるので、慣例だが簡素な
ものに。
私と咲月は、○○工業が予約してくれた、チェックイン済のホテルに帰った。
翌日は、仕入れ商材の確認ということで○○工業の生産ラインを見学、これは短時間で終わり、
その後は、その県にある大きな神社にお参りに行き、その後道の駅でショッピング、4時頃から、
歓迎会が始まった。
会場は、手打ち蕎麦屋で、夏に訪問された業務係長が、私に
「日本酒と蕎麦の相性は良いので」
と、笑顔で囁いた。
メンバーは○○工業の業務課長と係長、咲月に気を使って女性社員も1名、私と咲月の5名だが、
宴会はそれなりに盛り上がりを見せ、午後7時頃には2次会に行くことになった。
2次会は、プライベート扱いになるため、会費制により、カラオケボックスで開催、
○○工業の業務課の有志や、以前当社を訪問したことがある社員が総出で参加してくれた。
すごいのは、過去私の会社に出張した社員とその恋人(○○工業の関連会社の社員)も参加していて、話を聞くと、
私の会社に出張した際、大自然と食べ物に感動し、恋人とプライベートで、
年1回くらい旅行しているそうだ。
9時頃になると、私も大分酔ってきたので、お暇することとした。
大盛りあがりの2次会はまだ継続するようだが、私と咲月はホテルに帰ることになった。
あまり酔っていない咲月とほどほどに酔った私は、
「咲月、俺がこけたら、起こしてくれよ」
と、冗談を言いつつ、二次会場からホテルまでは1kmとないので、歩いて帰ることとした。
10月だと北陸では夜になると、涼しいを通り越し寒く感じることがあるが、関東は快適な
温度だ。
自動販売機で飲み物を買い、私と咲月はゆっくり歩いている。
「あの人達素敵でしたね」
ぽつりと咲月が言う。
「あの、プライベート訪問の恋人か、いい関係だったね」
と私も肯定する。
「咲月さんは、そんな関係の人いないの?」
うつむきながら、
「いません」
と一言、しばらくしてから咲月は、
「係長はいますか?」
酔っ払った勢いで、ぶっちゃけた。
「20代後半の頃、本当に好きな人いたけど別れた、ふられた、泣いた、しばらく女性はいらないと思った。でも、時々無性に寂しくなるんだ。今夜だけ恋人になってくれるか?」
そう言って、手を開くと、咲月が握ってくれた。
「係長、手のひら熱いですね」
と、またぽつりと言う。
「酔ってるし、緊張してるんだよ」
とぶっきらぼうに言った。
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