班ごとに別れてのテント設営、俺と北村さんは別班でした。
俺達の班は、テント設営を早々と終わらせてました。
実は俺の父が、アウトドア好きで、何回かテントでの宿泊経験があり、それが生きてたんです。
テント設営経験有りを、俺は北村さんに自慢げに話していました。
「マモー、ちょっと助けて~」
北村さんが俺を呼びにきてついていくと、北村さん所属の班のテントは、無残に倒れてました。
「お敬、ちゃんと先生の指示通りすれば出来ただろう?」
「それが上手く行かないからマモー呼んだんでしょ?お願い、助けて」
俺はその班のテント設営を手伝いました。
その釘、斜めに打ち込まないと、とか、その棒しっかり持っててとか、指示をしながら手伝い、テントは出来ました。
「マモー、有難う」
ロープの張り具合とかを確認していた俺の背中に、北村さんはおんぶをせがむ子供のように、抱きついてきたんです。
二つの柔らかい感触を、背中で俺は感じてました。
でも恥ずかしさ、照れくささ、思わず北村さんを振りほどいてました。
北村さんを女の子として、初めて意識した瞬間だったと思います。
林間学校が終わり、夏休みに入って間もなくでした。
いつものように、祖母が北村さんの和菓子を買って帰宅したときでした。
「守、お前お菓子屋さんの娘さんと、仲いいんだって?」
なんで?と祖母に聞きました。
「敬子ちゃんだっけ?娘さん。よく一緒に遊んだりしてもらってるとか、この前の林間学校でお前、大活躍したそうじゃないか。娘さんがお前のこと、まくしたてるように褒めちぎってたと聞かされてきたよ」
へ~そうなんだ、そのくらいしか思わなかったんですが、続けた祖母の言葉が、俺の意識を決定的に変えました。
「お前、和菓子屋さんの娘さんに、相当好かれてるみたいだね?和菓子屋さんの旦那さんも、そう言ってたよ」
そう言ってニヤッと祖母は笑ったんです。
北村さんが俺のこと好き!?
クラス、いや学年一番とも噂される美少女北村さんが?
強烈に北村さんを意識するようになりました。
そんなとき八月に入ってすぐでした。
「守~、北村さんって人から電話だよ」
母に呼ばれてびっくりしました。
北村さんからの電話?
凄く緊張しながら出ました。
「どうしたの?」
用件は北村さんの誕生会やるから来ないか、でした。
「俺なんか行ってもいいの?」
「いいに決まってるじゃん。ダメなら電話なんかしないよ」
そりゃそうだと笑いました。
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