それから私を、病院に連れていってくれました。
病室で、ずっと手を握っていてくれました。
しばらくすると、私の両親が飛び込んで来ました。
お父さんは、優希さんを見るなり、
「お前みたいなのと一緒だから、娘がこんな目に遭うんだっ!!」
そう、怒鳴りつけたのです。
「違うよっ。優希さんは、私を助けてくれたんだよっ!」
でも、私の言葉に耳を貸そうとしません。
「二度と、娘に近づかないでくれっ!」
優希さんは黙ったまま、お父さんに頭を下げ、病室から出て行きました。
ドアを閉める間際、私に微笑みかけてくれました。
しばらく、お父さんとは、口を聞きませんでした。
その日から、優希さんと連絡が取れなくなってしまいました。いくら、電話をかけても、繋がりませんでした。
数日後、優希さんが、警察に逮捕されたと知らされました。その理由に私は愕然としました。
優希さんは仕返ししてくれたのです。私のために…。それで、相手に大怪我を負わせてしまったのです。
私のせいだ。私のせいで優希さんの人生が、めちゃくちゃになってしまった。自分を責めました。
謝りたい。もう一度逢って、心の底からお詫びしたい。 でも、それは叶いませんでした。
私が拘置所に駆けつけた時、優希さんは少年院に送致された後でした。
それから、一年後のことです。優希さんが、少年院を退院したことを知りました。
私は優希さんに逢いにいきました。
一年ぶりに逢った優希さんは、私に微笑みかけてくれました。いつもと変わらない笑顔でした。
写真の中で……
優希さんは、お母さんを手伝うため、得意先に配達に行きました。
その途中、トラックに巻き込まれ、命を落としたのです。居眠り運転でした。
優希さんのお母さんから、こんな話しを聞かされました。
『ちひろに逢いたい。退院したこと1番知らせたい。でも、逢わないほうがあの子のためだから』
私は泣きました。ひたすら泣きました。涙が枯れ果てるなんて嘘です。涙はいつまでたっても、あふれてきました。
あれから、二年の月日が流れました。
今でも、優希さんのことを思い出すと、胸が痛くなります。心が痛くなります。もうすぐ、優希さんの命日です。
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