Uさんは、「サイフ忘れて興ざめしたから、バーで飲み直す!」と相変わらずマイペースなノリで、カラオケ店には入らず、タクシーをつかまえた。
今回は後部座席に窮屈な格好で3人乗り込んだ。奥からUさん、Mさん、私の順だったので、体が密着し、Mさんの10代の若々しい弾力のある腕と太ももがピッタリとくっついた。
Uさんは「○洲大通りの○○の前に」と慣れた調子で、運転手さんに話しかけ、Mさんに色々と話しかけた「カレいるの?」「やってるの?」「何で私は下ネタ聞いてるんだろうね?」など独り言のように話しかけていた。
Mさんもそんな質問に答えるか、答えないかの微妙な言い回しで受け答えをしていた。私は「意外とコミュニケーション取るのは上手なのかも」と思いながら、UさんとMさんの会話を聞いていた。
中洲のとあるビルの地下にあるバーに着くと、Uさんはカウンターでなくコの字になっているボックス席に座り、Uさんと私がとなり合い、曲がったとなりにMさんの順で座った。Uさんはおしぼりを持ってきたオーナーらしい男性に「いつものやつとチェイサーね」と言って、私達に「この人、ここのオーナーのIさん」と紹介してくれた。
この店は、自分の好みを伝えるとオーナーがそれに合わせてカクテルを調合してくれるらしい。
私はこういった高級感のあるバーは始めてで、たまに行く店はメニューがあり、それを見て注文していたので、何種類くらいしかカクテル名を知らないので、オーナーのIさんに「メニューを下さい」と言いつつ、Mさんに、「メニュー見てから決めましょう。」と話しかけた。
ところが、Iさんから「ここはメニューがありませんので、お酒の銘柄と飲み方、もしくはカクテル名とベース言って頂ければ、、、」と返された。
Mさんは苦笑いしながら、私に視線を向けながら「甘くなくて薄い、ロングのカクテルを」と注文していた。
この頃の私はバーボンやウイスキーの名前さえ曖昧だったし、ましてや、何年ものが美味しいとかの智識さえまったくなかった。
私は「オーナーのおすすめを」と焦って答えた。
Iさんは接客が上手で、「かしこまりました」と軽い笑顔でこちらに話しかけた。
お酒がテーブルに運ばれて来て、Uさん中心に話は盛り上がり、Mさんもロングからショート、薄い味から甘いお酒へとリクエストが変わっていった。
今なら分かるが、カクテルはロングよりショートが氷がある分アルコール度が薄く、甘いお酒はウォッカなどの強いアルコールを飲みやすくする効果がある。
私は2杯からはUさんのすすめるお酒を断らずに飲んでいたが、段々と酔がまわって来て、あのカードのことが頭にちらつき始めていた。
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