現れたのは案のA美だった。
でも後ろから現れたのは女だった。
二人は無言で砂浜の真ん中付近へと歩いて行った。
幸い俺には気付いていない様子。
でも俺からは二人の表情まで丸見えだ。
もしやA美はレズだったのか?
だが、向かい合う二人はどう見ても険悪な表情だ。
肩紐を結ぶタイプのワンピースを着ているA美が口を開く。
A美「意味わかるよね?」
S子「わかってるよ。ここで白黒つけたいんでしょ?」
顔は今思えば吉岡里帆似。キャミソールを着た女が答えた。
どちらも美人、というか可愛い。
それなのに表情は緊張なのか強ばっていた。
しばしの沈黙のあと
S子「こないの?」
パシンと乾いた音、A美がS子にビンタしていた。
S子も同じようにやり返した。
喧嘩なんかしたことないんだろう、次の手が出ないでいる。
ただお互いを睨む表情は厳しい。
今度は距離を詰め、髪を掴みあった。
両手で掴み合い引きずり倒そうと必死だ。
全力疾走の後のように二人の荒い息が川の音に混じって
ここまで聞こえてきていた。
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