>>続きの続きです。
お互い初めて同士だけど、ミカは暴走した。
今で言う「尊い」だったのだろう。
俺の好む事をとにかく探った。
また俺の事をとにかく崇めた。
尊過ぎて俺の髪の毛を集めたり、耳かきを率先してやったり、肩を揉んだりした。
そしてエロい方にもベクトルは振り切った。
初エッチに気合いを入れ過ぎて酸欠で気絶した。
それにショックを受けてリベンジに燃えた。
俺がその気になる様にと風呂に一緒に入っては、俺の股間のモノを元気にする行為を必死にした。
ぎこちない口の動きで舐めたり、全身でカラダを洗ったり、ソープ嬢の様な事を頻繁にしてきた。
俺もそんなミカが愛おしくて期待に応えた。
お互い好き過ぎて毎日が初々しく、いつも一緒でミカに告白した先輩から嫌がらせをされても苦ではなかった。
そして3年があっという間に過ぎて就職活動に入った頃、ミカは日に日に元気が無くなっていった。
態度は素っ気なくなるし、何かと自暴自棄になるし、就職なんてするつもりがないのかと思えるくらい不真面目になった。
ゼミの教授も心配し面談が頻繁に行われた。
俺も機嫌を損ねない様に接した。
病気かとも思ったけど、たまに
「ごめんね、ちょっと整理つかなくて」
と言っていたから、メンタル的な事だと思った。
そしていよいよ4年の夏にミカから告げられた。
「もう一緒にいられない」
俺はいよいよ来たかと思った。
でも理由がわからず、それは聞かないと納得できないと思っていた。
「何が原因?」
俺は静かにそう聞いた。
「私の実家ね、お父さんがちょっと大きな会社の偉い人でね。取引先の御曹司と見合いさせられて結婚しろって言われてる。もちろん断れるけど、その時は妹にさせるって言われた。妹もね、好きな人がいて別れるのは無理だって。でもどっちかが結婚しないとお父さんが無理矢理引き離すって。それで妹にはそんな酷いことさせたくないから私がする事にした。ごめんね。」
淡々と話した。
「それいつからわかってたの?」
そう尋ねると
「大学入る前から」
と静かに言った。
大学は思い出作りと見識を広げるためで、4年通ったら結婚すると言う約束だったらしい。
ならなんで俺と付き合ったのかと聞くと
「好きになったんだから仕方ない。でも悪いとは思ってた。別れなきゃいけないから。」
俺は皮肉っぽく
「あの事故の時にいっそ2人で死んでれば幸せだったんかな?」
そう言うとミカは
「ホントね~。でも死ぬわけにはいかないからね。私が死んだら妹が辛い目に遭うし。」
あの時、「死んだらダメ」と言うのはそう言う事か!と納得した。
俺も妙に冷静でミカの言われるがまま、別れる事に同意した。
そして別れたと同時に、ミカは大学にほとんど出なくなった。
元々単位も取れているし、就職も必要ない。
俺とも顔を合わせたくないからだと思った。
俺は徐々に空いていく心の穴を就活の忙しさで紛らわせた。
結局、卒業式に一目だけ見ただけでミカとはそれっきり会わなくなった。
3年ちょっとの濃密な交際中は、絶対ミカと結婚するものだと思っていたし、ミカもそう思ってくれていると信じていた。
しかしこの時代に親の都合で結婚相手を決められるなんて納得できなかったけど、ミカは受け入れていた。
これで良かったのかもと、自分に言い聞かせて過ごしていた社会人2年目に大学の同級生から食事に誘われた。
女の同級生も集まり、社会の厳しさをネタにバカ話をしていた最中、一人の女同級生から「そういや、ミカいたじゃん?◯◯と付き合ってた!連絡取ってる?」
不意に忘れようとしてた名前を聞いて動揺した。
「連絡は取ってない」
やっと絞り出した言葉だった。
「そっか、いや大変らしいよ。ミカ、卒業後に精神を病んだらしくて自殺未遂したとか、暴れて精神病院に入ってるとか。」
理由はわからなかったが、俺は心臓が締め付けられる様だった。
でもどうしたらいいかわからないし、何もできない。
その原因が俺と別れた事なのか、結婚相手への反抗なのか知る術がない。
実家も知らないし、ケータイ番号も消した。
友達に聞いてもいいが、もう俺は心が折れていた。
どうか、平穏な生活を送って欲しいと願いながらこれを書きました。
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