後日談その1 Aの場合
彼がAを唆したのか、それとも二人で共謀したのか、それとも女友達や会社の同僚も皆んなグルだったのか、そんな疑心暗鬼に陥ってしまって、誰も信じられなくなっていた。
でも時間と共に少しずつ冷静さを取り戻していって、前に進むために本当の事を知らないといけないと思うようになっていった。
震えるような思いで、彼に電話をかけた。
何度電話しても出ない。メールを何通送っても返信がない。もう駄目かと諦めかけたとき、着信があった。
「あの事まだ根に持ってんのか。俺のせいじゃねーよ。」
「Aさんがヤれる女紹介しろって、うるさくて。しつこく何度も電話かけてくるから、思い付きで冗談で言ったのに。Aさんが暴走したんだろ。俺には関係ない。」
「ヤラれたのはお前が隙だらけだからだろ。俺だってお前が可哀想だって思ってるんだぜ。」
と…言い放った。
どういうリアクションをとったらいいのか、泣くのか怒るのか、どうしたらいいのか、感情が次第に固まっていくのを感じた。
わたしたちはどうなるの?
「今まで通りでいいだろ」
彼は笑っていた。
私が彼の事でAに脅迫されて、犯され続けていることは全く知らない様子だった。
Aから着信があった。
いつもの誘いに従って、待ち合わせ場所に向かった。
本当のことが知りたい。この日は自分から率先して向かっていたと思う。
会うなりAは高級寿司店に連れて行った。
とても上機嫌で私にお酒を勧めてくる。
私はまともに会話する気になれず、終始無愛想に無言を貫いた。
少し酔がさめてホテルへと移動する途中、直前で車を停車した。なるべく機嫌の良いうちに例の事を問い質したかった。
彼から聞いた。グルなの?
「あぁ?なに?女紹介しろって言ったんだ。女がいっぱいいるだろ、あいつ。いい思いしやがって。調子いい事言って無視しやがって。あの日おまえが飲んでるって聞いたんだ。」
「前から話に聞いてた。どんな女か会ってみたかった。」
でももう、会う理由はない。
脅しは効かない。
「おまえがすごくかわいいから…」
「好きなんだよ」
と言って抱きついてきた。
私は何の感情も湧かなかった。
彼が何気なく言った事から、女に飢えて欲望肥大化していた、直情傾向で単純なAが、暴走した結果だと悟った。
Aが仕切りに何か囁いているけど、何を言っているのかさっぱりわからなかった。
ホテルに連れて行かれて、気が付くとベットの上にいた。なんでここにいるのか、ぼんやりしていた。
Aが激しくディープキスをしてくる。
体をまさぐってアソコに舌を這わせて、クリトリスを念入りに舐めている。
そして挿入しようとアソコにペニスを当てている…
それが…入らない。
アソコを更に愛撫、クリトリスをしつこく弄る、乳首を舐め回す、でも全く濡れない、入らない。
足を大きく広げられ、思い切り捩じ込もうとしたけど、先の部分が僅かにかすっただけで、激痛が走った。
Aも痛がっていた。
仕方なくAは、私の口に挿れて、頭を押さえて激しく動き、口の中で果てた。
私は何も感じなくなっていた。
どんなに愛撫されても、クリトリスを舐められても濡れない、小陰唇が開かない。こんなことってあるんだ…。
Aとは会う理由がないのに、その後2回会ってセックスした。
いやセックスしようとして、出来なかった。
この間と同じで入らない。
終始無言…何も感じない、反応しなくなった私を見て、Aは自信を失くしたように見えた。
その後すぐ、私は携帯、自宅の電話番号を変えて、隣街に引っ越した。もうAは追ってこない。やっと解放された。一つ前進するのに大変なパワーが要った。
早く対策出来なかったのは、心身共にダメージが大きかったから。何かを実行する気力が持てなかったから。
体が開かなかったのは、後にも先にもこの時だけ。心からの拒絶が、この様な形であらわれた。心と体が繋がっているのを感じた、不思議な体験だった。
Aの事でわかったことがある。
女を襲うのが大好きな変態だそうだ。
どこの女をどうやって犯したか、自慢そうに話すらしい。
えげつない奴、ゲスの極みだ。
なぜこんな奴が捕まらないのか、腸が煮えくり返る。
凌辱が好きな女なんている?
私は快感に堕ちてしまったけど、凌辱なんて大嫌いだ。(プレイなら別だけど)
でもこの半年後、状況は一転した。
Aは通勤途中で多重追突事故を起こし、相手を死なせてしまった。裁判を重ね、有罪判決を受けて交通刑務所へ。
この事故で会社を解雇され、新婚なのに浮気がバレて慰謝料請求され奥さんと離婚。
知っているのはここまで。
天罰だ、いい気味だと思った。本当にスカッとした。
でも問題はまだまだあった、彼の事だ。
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