後日談 その4 彼の場合
会社をクビになった彼は、ヤクザが絡む、とあるブラック企業に入社したことを噂で聞いた。
暫くして彼は別人のようになって再び私の前に現れた。
昔の事を謝って、やり直したいというのだ。信じられない。どんな神経してるの。
でも確かに別人のように優しくなったのは感じた。何度もアプローチをされて、少しだけ気を許して、心を入れ替えたなら、少しだけ考えてみようかという変な気持ちになっていた。それが大きな間違いだったと後になって後悔することになる。
彼とよりを戻した。でも結果はいつも同じ、浮気が絶えなかった。
別れて、戻ってを3年繰り返した。離れたいのに離れることが出来ない。
私は28歳になっていた。
この頃の彼は毎日が不安定で、別れたら彼がどうにかなってしまいそうで、離れることが出来なかった。
突然子供みたいに泣き出したり、食欲が無くてどんどん痩せていくのに、全く寝なくても平気でいる。
病院を勧めても行こうとしなかった。
私が次の日が仕事で、彼が休みという日の朝は、決まって彼は仕事に行かないでと、泣き暴れて私を困らせる。
何かおかしいと思って、彼が仕事の時に、合鍵で部屋に入って、タンスやクローゼットの中を探した。
見たことない四角の箱がクローゼットの奥に隠れていた。鍵付きでもロックされていなかった。中を開けると、ストローや注射器、使用感のある銀紙?ドラマで見たことがある『モノ』が出てきた。
やっぱり…
これを見た瞬間、すべてを悟った。
彼は中毒患者だと。
いつから?どこで?
どこで入手したかは、すぐに見当がついた。ヤクザがからんでいる彼の会社だ。
だとすると、あの会社に入ってから?
思い返すと本当に恐ろしかった。
彼の豹変もクスリによるものだったのかと思ってしまう。
もし動転した彼にクスリを打たれたらどうなる?自分だけでなく身内にも迷惑がかかる。
彼と向き合って、自首させる。でも普段の様子から、刺激をしたら大変な事になるのは分かった。もう私一人では対処出来ない。
恥をしのんで、弁護士の叔母に相談することにした。叔母は早速手を打ってくれた。皆が同席している所で、別れを伝えること。これは私の身の安全の確保、そして彼が暴れた時、警察を呼んで現行犯逮捕してもらうこと。果たして予定通りにいくのかどうか。
それが予定通りに運んだ。彼は興奮して身内が同席している店内で暴れ出した。
警察がすぐに駆けつけてきて、逮捕された。検査の結果陽性でやはり中毒患者だとわかった。
色々なプレッシャーに耐えられない、そんな彼の弱さ未熟さから、手を出すに至った…
彼との事はここまで。
やっと離れることが出来た。
23歳で出会って、28歳まで約5年。
彼に振り回され続けた苦い5年間だった。そして最後は本当に悲惨だった。
でも彼の転落と一緒に、自分も道連れにならなかったのが、唯一の救いでもあった。
そしてBさんは私と別れた後もずっと見守ってくれていた。
私が29歳になった時、別の人と結婚した。女友達は、結婚相手が私にそっくりだと言っていた。
会社の、とある出張所が営業所となり、そこに私が配属され、転勤することになった。
ここからまたリセットできる。
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