~ 続き ~
ゆっくりと奥へ歩を進める。しかし、こんなに空いているのに女性のそばに座るのはどう見ても不自然だ。私は一瞬考え、思い切って女性に声を掛けた。
「あのぉ、すいません。いつもここなので…いいですか?」
通路を挟んで隣の座席を指差す。
「え?あ、ああ、はい」
女性は作り笑いと、どうぞというジェスチャーをした。
すいません、と言いながらよそよそと席に着いた。なんとか言い訳をしたかった。
「空いてるのにごめんなさい。毎月利用してるんですけど、いつの間にかこの席じゃないと落ち着かなくなって」
「仕事ですか?」
「あ、はい。旅行ですか?」
「はい、帰るとこですけど笑」
気さくな性格なのか、自然に話してくれる。私は強く思った。この機会は絶対に逃しちゃいけないと。。
バスが動き出し、車内アナウンスが流れる。チラッと視線を送る。女性は履いていたヒールを脱ぎ、丁寧に座席下に並べていた。前屈みになり、谷間がこぼれる。かなりの巨乳だ。
『まじでエロいな‥何カップなんだろ…。』
ついボーッと見とれてしまい、女性が顔を上げると目が合ってしまった。
女性は私の視線の意図を感じたのか、軽く照れた様子で胸元を手で隠した。
思わず、「す、すいません、つい見とれて…!」と小声で言ってしまった。
私はここで畳み込まなければと瞬時に悟り、「あの、どうですか?」とコンビニの袋から焼酎瓶を出して見せた。
「え?」という顔をする。
「これも僕の定番なんですけど、せっかくなんでご一緒に‥」
女性は戸惑いを隠せない様子だったが、私は構わず「どうぞ」と紙コップを差し出した。
「じゃ、じゃあ‥」
と紙コップを受け取ったので私は静かに蓋を開け、彼女と自分の分を注いだ。
通路越しにお互い口元だけの乾杯をし、私は半分ほど一気に流し込んだ。彼女は軽く一口飲むと、ふふっと微笑み、二口、三口と続ける。
私は自分の大胆さに驚いていた。偶然居合わせただけの女性と、一緒に酒を飲んでいる。しかもかつて出会ったことのないほど魅力的な女性とだ。酒の力でも借りないとこれ以上は無理だと思った私は、残りの半分も一気に飲み干した。
それから互いにいろんな話をした。一番驚いたのは彼女の年齢だ。なんと今年で50だという。バツイチで、成人になる息子はすでに独立したそうだ。都内で小さなスナックを営み、普段は「ママ」をしているとのこと。
1時間は経っただろうか、かなり酔いがまわってきた。彼女も相当酔っているのがわかる。
「隣、いいです?」
私は思い切った。彼女は身体を窓側にずらし、どうぞという素振りを返した。心拍数が一気に上がるのがわかる。
「おじゃまします」と小声で言いながら彼女の隣に座った。フワッと香水の香りが鼻腔を包み、視界がぼんやりする。
「聞いてもいいです?」
「なあに?」
「ほんと綺麗ですよね。年齢聞いてビビりました笑」
「やだぁ笑 それ質問?」
仕事柄言われ慣れてるのだろうが、素直に嬉しそうだ。
「それに…もう、めちゃめちゃエロい…です笑」
「え~?笑 エロくないし笑」
「いやいや、これがエロくなかったら何がエロいんですか笑」
私は無防備すぎる彼女の胸元を覗き込むふりをする。
「やだぁ笑」
「何カップですか?すごい大きい」
「んーFかなぁ」
「すご!エロおっぱいじゃないですか笑」
「なにそれ笑」
私は完全に攻めの姿勢になっていた。この雰囲気を壊さず攻めれば、もっとイケると確信したのだ。
私は彼女の顔にぐっと近付いた。一瞬、彼女の身体が固まる。
「まじで綺麗でたまんないです…。眼鏡外してもいい…?」
そう言いながら私は手を伸ばし彼女の眼鏡をそっと外した。
「こら、ちょっと…」
私は彼女の顔をまじまじと見つめた。暗がりでハッキリとは見えないが、少し荒くなった吐息が伝わる。心臓がドクドク脈打つ。
「なんか‥やばいです」
私はそう呟くと、彼女の唇に自身の唇を重ねた。『ん』と小さく聞こえたが彼女はそのまま動かない。
ついに、彼女とキスをしてしまった。イケる、これはイケる…!
~ 続く ~
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