『あの…美香さんですか…?』
「…はい…。」可愛らしい声で返事しながら振り向く美女…。
…ん……ん?……美女…?…ん…えっ?
確かにサラサラストレートロングヘアーで丈の短い大人びた真っ赤なミニワンピにヒール…大人の色香を漂わせてたが…美女ではない。
いや、寧ろどちらかと言えば自分の事を棚に上げて敢えて言うが、ブサイクの部類に入るではなかろうか…。
確かに女性ではあるが一見そばかすだらけの男性にも見える…完全に失敗した…高鳴る鼓動は息を潜めて行くのが手に取る様にはっきり分かる。
ただ、男たるもの自分から誘ったドライブデートを、自ら無きものにしてはいけない…そう思い愛車シビックが待つ所まで彼女をエスコートした。
助手席に彼女を乗せ、戦場へ赴く兵士のように覚悟を決めてコックピットに乗り込む私…隣に座る彼女に目をやるとニコッと微笑んでくれるが、未だ気持ちの整理がつかない私は長髪の男が女装してるようにしか見えてない…。
ただ、車に乗り込んでから気付いたが彼女の香水は明らかにつけ過ぎで、車の中に彼女の香水が充満してる。
でも不思議と不快感はない…いや寧ろこの香水、ブランドは全く分からないが…分からないが一言で言えばとてもエロい。
色気ある女性がこの香水つけていたら、間違いなくフェロモン全開で男性は股間が膨らむのは必至…そんなとてもエロい匂い。
ドライブデートと言ってはいるが、私の脳内は突如の緊急事態でどうするか悩んだ末にある判断を下す…ドライブという名目のもと彼女を無事家まで送り届けよう、というものだった。
『美香さんって都内に住んでるんだよね、どの辺りに住んでるの?』
「T大学の近くに住んでるよ。」
『そうなんだ、もしかしてT大学生?』
「うん、そうだよ。」
頭の悪い私には無縁の場所である、当然どこにあるのかさえ知らない私だがT大学という位なのだからと東京駅を目指す事にした。
首都高を使ってさっさと行くかとも思ったが、流石に気が引けて下道で一路東京駅を目指すというミッションが始動した。
…とは言え、こんな出来の悪い私がT大の女子と出会う確率は今後ないだろう、そう思った私は最終目的地である彼女の家までを楽しむ事にした。
まあ…よく見ると大人ぽい真っ赤のミニワンピから伸びる脚は、ベージュのストッキングを履いていてなかなかに男心を擽り、車内にこれでもかというエロスを感じる彼女の香水は、脳内を痺れさせるには充分な程でムラムラとした気持ちが沸々と復活してくる。
実際道中どんな話をしたのか全く覚えてはいないが…愛車を走らせ都内に入った頃には、自分でも疑うような言葉を美香に投げ掛けていた…。
『あのさ…日本で一番の大学に通う女の子がどんな部屋に住んでるのか見てみたい。』
今でも何でこんな言葉を口走ったのか謎である。
「え~初めて会ったのに?嫌だ~。」
まあ、当然ですよね。笑
そんな押し問答が車内では繰り広げられた記憶…そして彼女の家に到着する。
「ホントに家に来るの?笑」
『うん、どんな生活してるのか見てみたい。笑』
「部屋散らかってるからちょっと玄関前で待っててくれる?笑」
『うん、待つ待つ。笑』
そんな遣り取りをしたと思うが、彼女の住んでたのは赤門前にある高そうなオートロック完備の賃貸マンション。
T大に通う位だからお嬢様なんだろうな…そう思いつつ玄関前で待ってるとドアが開いた。
「お待たせ…どうぞ。」
そう言われて部屋に入ったが、それこそ前カノは親が厳しく自宅住まいで門限付き、女性の部屋に入るのは初めてでドキドキしたと思う。
部屋は結構広く綺麗に片付けられており流石T大女子大生、大きな勉強机と本棚には難しそうな本が並んでいる。
2段ベッドで下に収納がありきっと洋服が沢山入ってると思われる。
ソファなどは無かったので壁を背もたれ代わりに床に座り、初めて見る女子部屋を眺めていると美香もすぐ隣に同じように座ってきた。
そのままで少し会話をしていたが、ふとお互い無言になり部屋が静まりかえる時間が流れ…お互い顔を見合わせ目が合った時にはキスをしていた。
あれだけ最初男に見えていたのに…。
To be continued…
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