サイフ事件の真相については、いったんここで置いておこうと思う。
あれから数か月の月日が経過した。相変わらず沖浦はデスクワークをしながら、時折A班の現場の方に顔を出すという、B班担当の俺と似たようなスタイルで働いていた。
このまま沖浦の存在も、サイフ事件の真相も、それこそ俺からすれば、「どうでもいいこと」となっていたのは間違いがない。
そんな時期の事だった。
ここ何年かA班に新人が定着していない。と上層部の方で言われ始めたのであった。具体的に言えば、常に募集をかけている部署なので毎月、何名かのアルバイト、パートの人間が応募きて面接し、そして本採用となるものの、こうして改めて統計を取ってみれば、A班の中で一番最後に入った新人でも、かれこれ1年前の中途採用となっており、この1年間、誰一人続いている者がいない。というデータが明るみになったのである。(入社してすぐに辞めていく)
その原因のありかを、沖浦は事もあろうに、「B班からの嫌がらせが原因だと思う」と、B班担当である俺に対しては、まさに宣戦布告のような発言を行ってきたのである。
確かに、昔からA班とB班には給与面、労働内容の面で遺恨があるのは誰もが知っている。そして、女社会なので陰険な新人イビリやイジメのようなものが存在している事も認識している。
だが、部署の違うA班の新人を、わざわざB班の人間が辞めさせるように仕向けている。というのは言いがかりに過ぎない。
その時になって俺は、初めて沖浦に対し、「敵意」を抱いたのであった。
そのような時に、俺のスパイとなってくれたのが、、以前の別記事の投稿で少し名前が出てきた由実さん。であった。
この由実さんはA班に所属していたが、どちらかというとB班よりの考え方を持つ気さくなオバチャンであり、俺のほうから何も頼んだつもりはないがA班の内部事情や、B班の内部事情までベラベラと話してくれるおしゃべりオバチャンなのである。
そこで俺は、本来の業務である、「なぜA班には新人が定着しないのか」の原因の究明と同時に、「沖浦の本当の狙い」を探るべく、由実さんに協力してもらう事になったのである。
それからの事だった。俺と由実さんが定期的に「会社の文句、愚痴」を言うために電話で語り始めるという行動が定着しはじめたのであった。
そして由実さんが言うのはこうであった。
由実「私も各方面から色々聞くけどさ、やっぱ沖浦はかなり計算高いと思う。」
俺「なぜ?」
由実「これは現場でしか飛びかってない噂なんだけど、あの人、いろいろ細工する人なんだよ」
俺「ほうー」
由実「たとえば業務日報とかでも、自分がひいきしている子の場合は好成績を残しているように偽装し、嫌な子の場合は、普通にやってるだけなのに「改善の必要あり」みたいな感じで日報書くんだよね」
俺「完全な私怨だなw」
由実「でね、その定着していない新人のほとんどは、、きっと沖浦から気にいられなかったんじゃない?」
俺「沖浦はそんなドロドロの人間関係が嫌だったんじゃないの?」
由実「それはまだ沖浦の事が見えてないと思う。あいつは表向きは、「私には社員なんてできませーん。管理職なんて出来ませーん」って言ってるけど、本当は自分がトップに立って支配したいんだっていう野望を虎視眈々ともってると思う」
俺「その理由は?」
由実「さっきも言ったけど、自分を中心とした派閥を作ろうとしている。嫌な新人を排除し、新しい新人を自分の中に取り込むという事で。ただ悪循環なのは、それをするから、余計に新人が定着しないんだけどね。何か、この会社めんどくさ。ってなるでしょ」
俺「でも、そんな私怨という形で自分の選り好みにできるもんなん?」
由実「事実。これは証拠があるけど、シフトみたらわかると思う。沖浦が休みの時に、沖浦の嫌いな人が入っているし、沖浦が気に入ってる人は、土日の休みが多く、嫌いな人は土日出勤なんだ」
俺「なるほどなぁ。。。それ、完全なる職権乱用だな。そこは公正にしないと」
由実「でも、うちら現場の人間には、上がきめた事にあらがうっていう事なんてできないじゃん。だから、文句いいながらも働き続けるしかないわけ。そこを、沖浦は足元みてるんだよ」
俺「なるほど。いわゆる、腹黒いっていうやつだな」
由実「で、結局、自分の運営方法が悪いから新人が定着してないのに、今度はB班からの嫌がらせで、と責任転嫁しようとしている訳だよね」
俺「wwww あるいみわかりやすいと言えば、わかりやすいww」
もちろん、俺と由実でこんな話をしているくらいなので、沖浦のほうも俺の陰口を言ったり、俺を排除しようとしたり行動をおこしているのだろう。そんな事は容易に想像が出来た。
もともとあったA班とB班の遺恨。第何次第二工場戦争か分からないが、しばらく燻っていた火がまた勢いを取り戻そうとしていたのであった。
対立構造は、A班の沖浦一派 そしてA班の反沖浦派 俺を筆頭にB班 そして由実さんたちの中立の卍式の対立構造でり、右をみても左をみても、どこにスパイがいるか分からず、おいそれと本心を語れないような、そんなギクシャクした雰囲気の中、仕事をするという日々が続いたのである。
それが俺にとってのピークであった。時期的な事はいっていなかったが、これは俺が退社する半年前の出来事である。
毎日のように「誰かが何かを言っていた」「誰かが〇〇をちゃんとやってない」「昨日、〇〇したんだって?〇〇がいってたよ」そんな、陰険な足の引っ張り合いが行われていたのである。
もういい加減、俺も限界がきていた。
よくよく考えれば、いつからこんな女連中、オバハン連中のドロドロした中にどっぷりと遣っているのだろう。
俺はそこはもう普通に、災いの根源である、沖浦に対し、「第二工場の環境改善の為に腹わって話そうぜ」と持ち掛けたのである。もちろんこの持ちかけは非公式であった。あくまで「個人的に」である。
俺が沖浦に持ち掛ける予定だった交渉のネタはこのとおりだった。
①まずはA班とB班を統合し、そこからA班希望者、B班希望者を募る。
②誰もいきたくないB班がいい。という変わり者がいれば、優先的にB班に配属する
③ほとんどの人間がA班に行く事を希望する事が考えられるので、そこでA班所属とB班所属を振り分ける。
④振り分けて終わりではなく、定期交代として公平性を保つ
⑤A班とB班の給料面を統一し、B班での労働に対し、〇〇手当という事調整をする。(それが出来るよう、上層部に掛け合う)
用意していたネタはこんな感じだった。
俺は社内メールで沖浦に、「ちょっと話しあるんだけど」と、あくまで公式ではなく個人的に話をしたい旨を相手に伝え、それから一席設ける事にしたのであった。
ところがどっこい。
この一席が、、、、沖浦という人間の、精神面の脆さ露見し、今まで塗りたくってきたメッキをはがし、、、、
なんや。真面目なフリしてここまで計算たかかったんかい。で、ここまで欲求不満やったんかい。と付け加えなければならない顛末に転がっていくのであった。
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