続きです。
その週末、私は朝イチの新幹線で香の元に向かいました。
香はホームまで迎えにきてくれていましたが、表情は固いままでした。
いつもなら車の中でもイチャイチャするのですが、さすがにそんな雰囲気はありませんでした。
香の家に着くと、香は私の前に座り
香「ごめんなさい。私、貴方を裏切りました。」
と謝りました。私は謝ってもらうよりも今後どうしていくのかを考えたかったのですが、香は涙を浮かべて俯いてしまいました。
私「それはもういいよ。俺も香のこと気遣えなかったからだろうし。それより、これからのこと話し合おう。」
香「…私な、ここ最近真剣に考えたのよ。貴方の顔見たら、私の気持ちはまた貴方に向くと思ったの。とりあえず、この週末は一緒にいて。貴方が帰るまでに私の気持ちがどうなったか言うわ。」
私「今はどう思ってるの?」
香「わからない。会えて嬉しいし、貴方のことは大事だと思う。でも、今までと違うの。」
私「…わかった。とりあえず2人で過ごそう。」
私達はただただ一緒にいて、同じ時間を共有しました。でも、今までのように楽しく話すでもなく、重苦しい空気でした。
夜になり、私は香とベッドに入りました。
いつもならどちらからともなくキスをし、セックスをしていましたが、この夜は香が初めてキスを拒みました。
香「ごめんなさい。身体重ねて流されるのはイヤなの。ちゃんとした気持ちがわからなくなりそうで…」
私は香の言っていることが理解できませんでした。しかし、無理強いしたら香の気持ちが離れる気がして、香を抱かずに眠りました。
朝目が覚めたとき、香はもう起きていました。
私「おはよう。」
香「おはよう。眠れた?」
私「疲れてたからかな。意外と眠れたよ。」
香「そう。よかった。」
…………
しばらく沈黙があり、香は口を開きました。
香「あのな、私昨日一晩眠れなかったの。貴方のこと本当に真剣に考えたの。貴方の顔見て、幸せなこともすごく思い出した。でも、今までみたいに愛してるとは思えなかった…」
香は泣きながら話し続けます。
香「私のワガママで、しかも貴方のこと裏切って本当にごめんなさい。でも、このままの気持ちで続けていけない。ごめんなさい…ごめんなさい…」
私は香の話を聞いて、もう無理なんだなと実感しました。悲しみ、怒り、悔しさ、情けなさ、色々な気持ちが混ざりあった感じでしたが、不思議と香を責めることはしませんでした。私にも悪いところが沢山あったと思ったからかもしれません。
私「わかったよ。帰るわ。今までありがと。」
香はまだ泣きじゃくっていましたが、構わず私は荷造りし、帰り支度をしました。玄関から出ようとした時、香は後ろから私に抱きつきました。
香「ごめんなさい。」
私「もういいよ。じゃあ。」
香「うん…」
それが香を見た最後です。
その後香は会社も辞め、他の仕事に就いたようです。地元に戻って元気に暮らしていると風の噂で聞きました。
共通の友人もいるので、その後電話で話すこともありましたが、今ではお互いいい思い出だねと言えるようになりました。
今では、香ももっと幸せになってほしいなと心から思っています。
※元投稿はこちら >>