残業は、何の事件も起きず終わった。
あれは何だったんだろうと疑問だけを残して。
次の日出勤してコーヒーサーバーの前にいると先輩が寄ってきた。
「昨日はお疲れさん」
「おはようございます、ありがとうございました」
ニコニコとコーヒーを片手にデスクに戻る先輩を目で追っていた。
その日から先輩を目で追う日々。
恋なのか自分でもわからなかった。
ある日思いきって聞いてみた。
「先輩、この前のお礼に食事でもどうですか?」
「いいのに」
「いぇ…嫌ですか?」
「まさか!いつにする?」
先輩は相変わらずニコニコしながら、食事を承諾してくれた。
オフィスの近くの雑居ビルの前で待ち合わせした。
何となく、会社の人達に見られるのが嫌だった。
二人だけの秘密を抱えたみたいで胸が高鳴った。
地下に降りる炉端焼きの店に入ると、おじさん臭くてごめんねと先輩は笑った。
※元投稿はこちら >>