「先輩、最悪ですよっ」
「何が」
タクシーに乗ると、玩具の入った茶色い紙袋を大事そうに膝の上に置いた。
「知ってる人に見られたらどうするんですか」
「誰に?」
「職場の人達とか…」
「その話しなんだけど」
先輩が顔をこちらに向けて少し真面目な顔をした。
「えっ?なんの話しですか?」
「…今日は止めとく」
「気になるじゃないですか」
「そんな事より、これ早く使いたいね~」
そう言って膝の上の紙袋を揺らす。
「止めて下さい」
私は、紙袋を取り自分のお尻の横に置いた。
「先輩って酔うと変なキャラになりますね」
「かなぁ…だからバツイチなのかも」
「ん?」
酔った勢いにまかせて、先輩はサラッとカミングアウトをしてきた。
「先輩、結婚してたんですか?」
「かなり前ね」
「子供は?」
「出来なかった…てか2年で離婚だぜぇ」
「先輩笑えません」
「もう、止めよう。酔いが醒める」
「…はい」
何故だかこの時私は、見たこともない幻の元妻に嫉妬していた。
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