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2013/11/30 14:16:51 (4V6VmYCQ)
学食でひとり、お昼を食べていたら、うしろから肩をたたくヤツがいた。
振り返ってみると、高木だった。

『ここ、いい?』と尋ねることもなく、高木は僕の正面に座った。
「お前・・・、由香ちゃん、泣かしただろ」
僕は、箸でつまんだエビフライを思わず落としそうになったが、寸でのところで持ち直す
と、高木に目を向けた。

『なんで、お前が知ってんだよ』
僕が目で尋ねると、高木は女の声色を使って、
「『どうして、田中先輩に彼女がいるって、教えてくれなかったんですかぁ!』って、散
々なじられた」
そうだ、コイツ、由香のお姉さんとつきあってるんだった。

訊きもしないのに、高木は、続けた。
「由香ちゃんが入学して、暫く経ったころだったかな、『学校に、田中先輩って、います
よね』的なこと訊かれたから、ハイライト的に、お前のモテない半生を語ってやったわけ」

『事実だけど、余計なお世話だ』と思ったけど、僕は、少し顎をしゃくって、続きを促し
た。

「そこから、大どんでん返しの大学編に入ろうとしたとき、あの娘、もう聞いてなくって
さ、そのまま出てっちゃったわけ。まさか、由香ちゃんが、お前のこと、そんな風に思っ
てるなんて、思わなくってさ・・・」
高木が、無遠慮に僕のエビフライを指でつまもうとしたので、僕はそれを箸で追い払った。

「・・・んで、そのままにしてたら、昨日、由香ちゃん、バーンって、入ってきちゃって
さぁ・・・、びっくりしたの、しないのって、びっくりしたんだけどさぁ、俺、おねえち
ゃんとバックからドッキング中よぉ」

うーん、高木の話は、いろんなところにインパクトがありすぎで、どこに集中して聞いた
らいいのか、わからなくなる。

次に、高木の指が、プチトマトに伸びてきたが、今度は見逃してやった。
高木は、自分の指をぺロッと舐めてから、
「そっから、わんわん泣き出して・・・、こっちは、もう少しって、とこだったんだけど、
すっかり萎えちゃったんだよな。それで、パンツだけはいて、話を聞いたら、急に怒り出
したってわけよ・・・」
「どっちが?」
「両方だよ。おねえちゃんは、一番いいところ、邪魔されて、妹に怒ってるし、妹は、俺
に怒ってるし・・・」

由香の話と谷口さんの話を混ぜて話さないで欲しいと思ったが、由香の部分だけ、要約す
ると、こうだ。

どうやら由香は、僕の友人で、姉の彼氏である高木に、僕のことを中途半端に聞いて、僕
とあんなことになって、傷ついて、家で姉とエッチしてる最中の高木に当り散らした、と
いうことらしい。

「まぁ、人のこと、言えた義理じゃないけど、まずいんじゃないの?」
そんなこと、わかってる。

「由香、ほかにも何か、いってた?」
「ん? 『・・・で、気持ちよかったの?』って訊いたら、顔、真っ赤にして怒ってた」
高木が、ニタニタしながら、答えた。

コイツもコイツだが、高木のところに話を持っていく、由香も由香だ。
何といっても、相手が悪い、最悪だ・・・。倉田探偵の聞き込みにあったら、コイツは、
あることないこと、全部、しゃべるだろう。悪いヤツではないが、『人の不幸は、蜜の
味』がすることだけは、知っている。

高木は、今度こそ、エビフライをつまむと、僕は、もう、それを阻止することができな
かった。二匹しかいないエビフライの一匹が、上を向いて、大きく開けた、高木の口に
吸い込まれていった。

「倉田さんも、由香ちゃんも、目ぇ、悪いんじゃないのぉ?」
いちいち、癇に障ることをいうが、高木の言いたいことは、わかっている。

女の子なら、高木か松潤を選べといわれたら、迷うだろう。
僕なら、高木を選ぶかもしれない。

「口止め料、もらったから、余計なこと、言わずにいてやるからよ」
僕のエビフライは、そういうことになたらしい。

いつの間にか、高木は、僕の脇に立っていて、僕の肩をポンと叩くと、学食を出て行っ
た。両手を口元にやって、キャーキャー言いながら、高木の後姿を目で追う、女の子た
ちが目に入った。

ホントを言うと、どうして高木が僕とつるんでるのか、これも、よくわからない。スポ
ーツ万能で、ルックスも良くて、成績は僕とどっこいどっこいだったけれど、歌なんか
歌わせたら、みんな持っていってしまう。

女友達は、わんさか、いるのだけれど、何故か、男の友達は、僕だけのようだ。それに、
高木は、何でも僕に話してしまうので、あいつの悪事の限りは、知り尽くしている。二
股、三股は、あたりまえ。谷口さんとは、結構、続いてるみたいだけど、あいつが、改
心した? あり得ない。キリストが、仏教徒になるくらい、あり得ないことだと思って
る。

つい、この間も、どっかの地下街で、フラフラ歩いている看護士の卵に声を掛けて、し
っかり、仲良くなったって言っていた。

そのとき、高木が、また、戻ってきて、一言だけ僕の耳に囁くと、足早に去っていった。
「由香ちゃん、マジ、すごかったよ、ブロウ!」

『あいつーっ!!!』
親子丼、もとい、姉妹丼かよっ! あいつは、天使の皮を被った悪魔だ!
これからは、ルシファー高木と呼んでやる。


そのとき、後ろで由香の声がした、
「せんぱぁい、あの後、大丈夫でした?」

大丈夫じゃなかったけど、僕は、振り返って、曖昧に頷いてみせると、由香は、ホント
にかわいらしく笑って、
「今の高木さんでしょ? お二人って、本当に仲がいいんですね。 先輩とのこと、話
したら、必死に庇ってましたよ。最後まで、説明しなかった俺が悪かった、って」
「へぇ? あいつが?」
「ええ」

『・・・やられた。あいつ、また、僕をからかった・・・。でも、あいつ・・・、僕を
庇ってくれたんだ・・・』

「許してもらえました?」
「えっ?」
「だから、倉田さん」
「あぁ・・・、許してもらえたような、もらえてないような・・・」
「あたしから、いいましょうか? 『許す気がないなら、もらっちゃいますよ』って」

いや、いや、由香には、本当に申し訳なく思っているけれど、折角、ハンコついて、
アソコも突いて、首の皮一枚、繋がってるのが、元の木阿弥になっちゃう。

「いや、お申し出は、ありがたいんだけど・・・、これは・・・、僕と倉田さんの問
題だから・・・」
「・・・えへ、そうですよね」
由香は、複雑な笑みを浮かべて、ぺロッと舌を出すと、
「でも、『倉田さんが、怒ったままでいますように』って、お祈りするくらい、いい
ですよね?」

本気か、冗談か、区別がつかないまま、僕は、曖昧に笑い返して見せた。
『由香、それって、祈るって言わずに、呪うっていうんじゃないの?』

オンナって、ホントにコワい・・・。
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2
投稿者:enzzob   enzzob
2013/12/01 05:23:04    (aZBpl0xn)
確かに祈るじゃなくて怨むだよね笑
3
投稿者:(無名)
2013/12/04 09:51:41    (1XWQPuvz)
たまたまここにやってきて
このシリーズ全部読ませて戴きました。
たぶん実話だと思うんですが
(あまりにもよく出来たストーリーなので。ただ話に矛盾がないのできっと実話なんだろうと。)
とても面白かったです。
文章の表現力もすばらしいです。
エピソードがどれほどあるのか分かりませんが
続きを楽しみにしています。
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