長年勤めてた会社を辞める事にした。
理由は馬鹿らしい。
社内恋愛の彼が私を振って、年上の女とデキ婚したせいだ。
女の方は、産休に入るらしかったが、どうにも怒りが治まらない。
えーい、辞めちゃえって思いきってしまった。
トップが送別会を開いてくれた。
二次会、三次会と進むにつれ人数が減っていった。
トップに気に入られてた取引先のTさんも三次会まで来ていた。
昔風のbarにまばらに座り、みな思い思いに飲んでいた。
送別会の雰囲気はすでになかった。
カウンターに座り、一次会で貰った花束を眺めていた。
barの人が気を効かせて花束を水につけてくれた。
Tさんが横に座った。
「星さん何で辞めるの?」
「聞きたい?」
「うん」
「やだ」
「教えてよ」
「そうだなー」
酔ってるのもあり、Tさんを挑発するように笑った。
「え?なに?なに?」
Tさんと私はカウンターに頬を乗せて小声でコソコソと話した。
ふいに酔った女性社員に絡まれた。
女性社員を男性社員に押し付けカウンターに戻った。
「Tさんタイプですよ」
「またまた」
「本当にタイプですよ」
「嬉しいけど取引先はマズいな」
「私、もう辞めましたけど」
「あ、そっか」
「連絡先交換しちゃいます?」
「しちゃう?」
私は、正直どっちでも良かった。
Tさんが引いて教えてくれないならそれでいいと思ってた。
また社員に絡まれた。
適当に会話してカウンターに戻ると、ノートの端切れをTさんが丸めて渡してきた。
「後で見て」
「うん」
しばらくして三次会も終り外に出た。
三次会まで居てくれてた人達は私の味方で「辞めないで下さい」など嬉しい事も言われたが握手して別れた。