いつものバーでたまたま隣合わせたバツイチ熟女の和美さん。
物静かで大人しく真面目、とても下ネタなどする雰囲気ではない。
紺のスーツに身を包んだ和美さんの仕事は保険の外交員らしいが
およそ俺がこれまでイメージしていたものとはちょっと違う。
昼休みになると束の間の休息を邪魔しにくる保険のオバサン連中
は、しつこく口うるさく新発売の保険を勧め、わざとらしく取り
繕う偽善の笑顔と底の浅い会話で不快感を覚えさせるものだ。
そういうものだと感じていたのだが、和美さんは違った。
その語り口と落ち着いたオーラが話を聞く側に安心感を与えて
くれる。
しかも、こういう場で保険を勧めたりする無粋な真似はしない。
こういう素敵な営業もいるんだな・・・と、俺は好感を覚えた。
汗をかいたカクテルグラスに添えた細い指先に大人の女の色気を
感じる。
軽くウェーブの掛った肩甲骨ほどの長さの髪。
細く尖った顎、時折見え隠れする首筋と項。
おちょぼ口に低いが筋の通った鼻。
キリっと上がった眉とは対照的に垂れた目尻。
顔を直視するのが照れるくらい全てが俺好みだった。
前置きが長くなったが、残念なことに和美さんは帰ってしまった。
バーに残った客は俺を含めて男ばかり4人。
時間は深夜1時を回っている。
和美さんほどの女性客が来店し、偶然にも俺の隣に座ることなど
まずこの先あり得ない。
急につまらなくなってきた俺は、さっさと会計を済まし、店を
後にした。
タバコを買ってから帰ろうと帰宅途中のコンビニに入った。
すると、和美さんが買い物をしていた。
俺は嬉しくなり、品物を探すフリをしながら和美さんに近づいた。
「先ほどはどうも・・・」
そう声を掛けると、和美さんは驚いた様子でこちらを向き
「あらっ・・・こちらこそ、楽しかったわ」
と、笑顔をこちらに向けてくれた。
そして
「もうお帰りなんですか?」
と、不思議そうにそう聞いてきたので
「えぇ、まぁ、なんとなく(笑)」
と、答えた。
いつもならきっと
(貴女が帰って寂しくなったから)
なんて、本気の冗談でお世辞でも言うところだが、彼女にはそれ
が通じないように感じた。
「この近くにお住まいですか?」
バーではどこに住んでいるか?など聞いていなかった。
「えぇ、この先のアパートに・・・寂しい独り暮らしです」
「僕もこの近くなんですよ」
「そうだったの?偶然ですね」
「嬉しい偶然です(笑)」
「あはは・・・」
お互い買い物を済ませ、一緒に店を出た。
ここで、じゃあ!・・・と、別れるのもなんだか気まずく
「この辺り暗いですし、途中まで送りましょうか?」
と、聞いてみた。
「本当?お願いしちゃおうかしら(笑)」
俺は心の中でガッツポーズした。
「この辺りって変な人出没するらしいですから助かります」
俺たちはゆっくり並んで歩き始めた。
5分ほど歩いて
「あっ、私の家ここなんです」
と、彼女が3階建ての白いアパートを指差した。
ここでお別れか・・・。
俺は残念に感じ、そして同時に口説けばよかったと後悔した。
「結構新しいアパートですね」
笑顔を作りどうでもいい感想を述べる。
「でも、狭いんですよ。今のほかに寝室が一部屋あるだけです
から・・・」
「独り暮らしなら丁度いい広さでしょう?」
「そうね・・・お掃除は楽かしら(笑)」
二人の関係になんの進展もない男女の会話が続く。
しかし、この後驚きの言葉が和美さんの口から出た。
「あの・・・よかったら、寄っていきませんか?」
「えっ!?」
「あっ、迷惑だったらいいんですけど・・・」
「いえっ、迷惑だなんて・・・嬉しいお誘いですけど(笑)」
「お茶でも・・・あっ、お酒もありますよ(笑)」
「いいんですか?」
「はい、明日は休みだし、まだ寝るには勿体ないでしょ?」
「そうですね」
「もう少しお話しましょ^^」
これは奇跡だ・・・俺は彼女の部屋に招かれた。
出かけなきゃ(汗)
続きはまた今度^^;