自分には、とても忘れられない時期があって、ほんの数年なんだけど、その頃の時代が忘れられない。
もう、相当昔のことなんだけど、俺が20代の前半だった頃なんだ。
忘れられない恋をした。
全てを賭けて愛せる人だった。
2つ年上だったけど、素敵な人だった。
国仲涼子に似た美人で、俺にとって二人目の女性だった。
セックスというものが、単に快楽を求め合うものじゃなく、身体と心を繋げあう神聖な時間だと気付かせてくれた。
正常位というものが、男女の愛し合う究極の体位で、その正常位だけでもさまざまなバリエーションがあって、対面座位に近いもの、両手を繋ぎ合って引っ張りながら彼女が空中で喘ぐもの、そして、二人が手を繋いで身体がV字になるようなものもあった。
腰をクイクイさせながら、アクロバティックな体位で快楽に耽る、あんなセックスは後にも先にもなかった。
とにかく、正常位が基本で、対面してこそいい所に当たるという感じだった。
やっぱり、カリがオマンコの天井に当たる方が、女の子も気持ちイイみたいだった。
あれ以来、俺はバックをしなくなってる。
別れは突然だった。
全てを賭けて愛した人が、この街を出て行った。
「理由は訊かないで。私、どうしてもこの街にいられない理由ができたの。お願い、わかって。」
縋るような目で言われ、黙って見送った。
「さよなら。私のことは、絶対、探さないでね。」
そう言って、去っていった。
最近、友達と飲み屋で飲みながらテレビ見てたら、その人と付き合ってた頃の年代を特集してた。
みんなが、
「うわ~、懐かしい~。」
と言っていた。
でも俺には懐かしいという感情は無くて、今でも、その頃の事は鮮明に覚えてて、まだその時代が終わってないから懐かしくなかった。
去って行ったあの人を探したら、その時代が終わるような気がしたけど、探さない方がいいんだろうなと思ってるから、終わらなかった。
みんな前を向いて生きてるから、懐かしいんだろう。
俺だけあの時代を後ろを向いて生活してる。
それじゃダメだと思う時もあるけど、あの人を探すと良くないような、怖いような気がしてる。
心のどこかで、あの人がもうこの世にいないような、そんな気がしてる。
嫁さんは知らないけど、俺には、そんな昔の恋人がいるんだ。
ハナミズキ、瞳をとじて、ファンタスティポ、恋におちたら…
この辺りの歌が聞こえると、あの頃に心が戻るんだ。
あの頃の心にしかない、あの頃の自分と、あの人との世界、それは懐かしさとは違うんだ…