私は、正人さんは突然現れたように感じていました。
『ホワイトナイト』まさにそんな雰囲気でした。
ある日曜日、私たち夫婦は博多駅近くの喫茶店で正人さんに会い借金の残額と借入先など詳しく聞かれ
素直に全部答えました。そしてそこで、以下のことを言われました。
①A社(闇金)、B社(金利6%ぐらい)の計2社(約1,300万円)はすぐ返済の道筋を考えよう!
②長女は大学に行かせるつもりか?
③今の住まいは?家賃は?
私たちは質問に全て返答し、その日は正人さんは飛行機で帰って行きました。
それから1週間後、正人さんから主人に連絡がありました。
「哲先輩、準備ができたので〇月△日にA社とB社を自宅に呼んで下さい。」
「それと、長い時間になると思うので、お子さんを預けるようにして下さい。」
主人は「分かった!!頼む。」と言って電話を切り、A社とB社にそれぞれ電話を入れました。
そして遂に〇月△日を迎えました。
13時00分、東京土産を持って正人さんは私たち夫婦のアパートへ来られました。
その日は金曜日で主人と私は午後から休暇を頂いていました。
2人の娘は、借り換えの理由を私の父母に話して日曜日まで預かるようお願いし、旅行に行ってもらいました。
緊張しひきつった表情の主人と、少し安堵感を出していた私テーブルをはさんで少しの雑談があり、正人さんが「A社は14時、B社は15時でしたよね?」と確認がありました。
主人は首を縦に振ります。すると正人さんは「約1,300万円です。流石に契約書無しは無いでしょうから・・・。」といいながらテーブルの上に現金を並べ
白い封筒を出してきました。そして一言、「哲先輩、封筒に契約書が入っています。奥さんとご確認を!!」
主人は相変わらずひきつった表情のまま封筒の中にある書面を取り出しました。
そしてサラッと約10秒ほど目を通して私に書面を渡し、洗面所へ向かいました。
私の目の前には「契約書」と書かれた書面がありますが、数行読んでいくと瞬きもできないような私にとって衝撃の内容が書かれていました。
「契約書」
甲(哲)と乙(紗枝)は共同にて金壱千三百萬円を丙(正人さん)より借り受ける。
甲と乙は返済期間中は何があっても離婚しないこと。
甲と乙は自傷行為等は絶対にしないこと。
乙は丙と肉体的な奴隷契約を結び、甲は本書面にて追認する事。
なお、本契約成立時より甲乙双方は丙から乙に関するすべての要求を拒否できない。
反した行動をした場合には、長女が18歳到達時に丙へ差出し、丙が結ぶ相手と結婚させること。
甲及び乙は、丙が指定した住居へ転居する事。なお、転居費用は全て丙の負担とする。
転居先の賃料は月々70,000円とする。
まだ幾つかありますが、こんな事が書かれていました。
私はテーブルに伏し大泣きしました。それの鳴き声を聞いて主人は私の後ろに呆然と立っていたのでしょう。
時間は経過し、時計は13時45分になっていました。沈黙していた正人さんが「どうしますか??」と口を開きました。
ここまで読んでいただいた勘の良い方はもうお気づきではないでしょうか?
そうです、主人は正人さんとの下打ち合わせで私を売っていたのです。
私は茫然としていましたが、とにかくA社の取り立てから逃げることを望んでいました。
それぐらいA社の取り立てはきつかったです。
私は主人と正人さんを睨みつけましたが、精神的に力尽き承諾しました。
そして3枚に3者が署名押印し終わった時、玄関のチャイムが鳴りました。
A社はコワモテの2人と細身の男が入ってきましたが、正人さんが堂々とした対応でA社残額を全て返済できました。
その後のB社も滞りなく返済し、私たち夫婦はクラウン1台分程度の借金を残すことになりました。
(残りの借金はそれから8年かけて完済できました。)