待ち合わせの時間より15分早く着いた。
駅前のケーキショップに入り数日遅れのバレンタインチョコを選んだ。
甘い物が好きな彼に色々な味のチョコが入った詰め合わせにした。
気に入ってくれたらいいのだけど。
スーパーのトイレに入りグロスを引き直す。
あまりお洒落は出来ない。
私は、そこら辺にいる普通の主婦だからだ。
携帯が鳴った。
「着いたよ」
「タクシー乗り場にいるね」
そう言うと私はタクシー乗り場へと急いだ。
彼の姿がなかったのでベンチに腰掛けようとした瞬間、視界の左側に人影が入った。
顔を向け私は確認した。
8ヶ月ぶりに会う彼は、少し印象が変わっていて戸惑った。
目の下のクマがやけに目立っていた。
彼は、少し頷いて私をタクシーに誘導した。
瞬間的に間違いないと判断して付いて行った。
「先に乗りなよ」
レディファーストなのか、私を先に乗せた。
「アレどこだっけ?」
彼は私に問い掛けてきた。
私は、前によく使っていたホテルの近くの施設名を運転手に告げた。
タクシーが走り出すと、ポツポツと会話をした。
「髪伸びたね」
「時間なくて…美容室行きたいんだけど」
私は、何となく言い訳を口にしてた。
「そっちはどう?寒い」
「それがさ、寒い」
「やっぱり寒いんだ」
「何ヵ月ぶり?」
「8ヶ月」
「そんなに空いたか」
「去年の10月会えなかったから」
「そうだったな」
「うん、そうだよ…」
「犬元気?」
「うん、元気元気」
「最近、フレンチブルドック欲しくて」
「あれ可愛いか?」
「ぶさ可愛い」
「そのぶさ可愛いってやつ、俺にはわからん」
タクシーが目的地に着いた。
降りてラブホテルに向かって歩き出す。
「空いてたらいいけど」
幸い部屋は二つ空いていた。
「どっちにする?」
「うーん…こっち」
私はピンクを色調にした部屋パネルを指さした。
ボタンを押しエレベーターに向かう。
「頭ぶつけないでね」
180センチある彼は、エレベーター近くの飾りに頭がスレスレだった。
部屋に入りお互いコートを脱ぐ。
「疲れた顔しててごめんね」
「俺もだよ」
私が先にソファーに座った。
チョコを思い出して立ち上がりバックから出した。
彼もお土産を出した。
スイートポテトだった。
「これ、一応お土産。持って帰れないよな。食べようか。固くなっちゃったな」
彼は、箱から出し皿に乗せレンジに入れた。
この間、私は一言も喋っていない。
彼はカッコいい人だ。
背も高いし、顔も普通よりは上。仕事もいい。
何故、私みたいな主婦を相手にしてるのだろうと、ぼんやり思った。
レンジが止まり彼が皿を出す。
「あちっ」
「気をつけて」
冷蔵庫からお茶をニ本出し、スイートポテトを食べる。
温め過ぎて指で掴むとフニャッと崩れた。
「あ、崩れる」
「うん、でも温かいから美味しいよ」
「だね」
私はフニャフニャのスイートポテトを口に慎重に運んだ。
「あ、これ…バレンタイン」
「バレンタイン終わってない?」
「だって、送る訳には行かないでしょ」
「まぁな」
彼はゆっくりとシールを剥がし箱を開けた。
もう少し高いのにすれば良かったかなと頭を過った。
説明書を読んでから口に入れた。
「ん」
「ありがと」
彼がチョコを分けてくれたので食べると、余り甘くなかった。
「ん~上品な味…」
「ん、上品」
「甘くないね」
「甘くはないな」
おうむ返し。
あまり気に入らなかったかと落胆した。
チョコとスイートポテトを食べてると、不意に抱き寄せられた。
「キスは?」
不満と甘えが混じった声で私に問う。
抱き寄せられた肩口から顔を上げると唇を重ねた。
舌を絡めあい唇を吸った。
苦しくなって唇を離して呼吸を整えた。
「どうした?」
不安そうな声。
「ちょっと苦しくて」
そう言うと、唇を重ね直した。