「愛人」がいる。二十台後半の人妻だ。夫は医者で大学病院に勤めてい
る。そんな彼女が何故私と契約を結んだかと言えば、よくある話だが借金で
ある。夫に内緒で作ってしまった。夫の経済力からすれば返せない金額では
ないのだが、言い出せなかった。そこで昔からの友人である私に相談したと
いう訳だ。
それなりの額ではあったが、助けられないことはなかったので、肩代わり
することにした。が、私は友人であったその彼女に以前から引かれていた。
上品で美人。すらりとした長身で肌が透けるように白い。男なら誰でも抱き
たいと思う女性だ。
そこで助ける代わりに見返りを求めた。彼女も覚悟を決めたようだった。
だが私が求めたものは彼女が想像していたものとは違っていた。彼女と契約
してもう三ヶ月になるが、セックスをしたことはない。では何をするのか?
実を言うと、私は女性の体毛、特に腋毛を剃るのが好きだ。それが美人の
ものであればあるほど喜びが増す。「一年間、君の腋毛を処理させて欲し
い」。それが、私が彼女に求めた見返りだった。彼女は理解できないようだ
った。無理もない。それ以外は一切何もしなくて良いというのだから。繰り
返し本当にそれだけでいいのと聞いてきたが、何度も聞かれても答えは同じ
だ。
初めて彼女の腋毛を剃った時は本当に興奮した。ホテルに入り、持参して
きた道具を広げている間、上着を脱いで脇の下が出せる姿になってもらっ
た。黒のノースリーブだった。準備を終えると、椅子に座ってもらい、その
まま右手を上げさせた。会う前のしばらくのあいだ腋毛は剃らないでくれと
頼んでいたので、真っ白な肌に黒い腋毛が生えていた。彼女のような品のあ
る女性が腋毛を伸ばしている姿は非常に違和感があるのだが、それがまた良
い。顔を近づけてじっと見つめてしまった。彼女は恥ずかしそうだった。私
は、もったいつけた動作で床屋がやるようにシェービング・クリームを泡立
てると、それを刷毛でたっぷりと彼女の脇の下に塗りつけた。彼女が微妙に
体をすくめるのが分かった。
剃刀を出すと彼女の目に恐怖の色が浮かんだが、「じっとしていれば絶対
大丈夫だから」と優しく言って安心させた。それから丁寧に丁寧に腋毛を剃
り始めた。その間、二人とも何も喋らず、ぴんと張りつめた空気が流れた。
この時間がたまらない。そっと横顔を盗み見ると、目を閉じて緊張に頬を染
めている。たまらなく美しかった。漂う香水の香りも興奮をそそる。
剃り終わると、熱いお湯で絞ったタオルで腋の下を拭った。しゃぶりつき
たくなるほど美しい、つるつるした腋の下が現れた。彼女はほっとしたよう
だった。同じ事を左の腋の下についても行った。
彼女は内心腋毛の処理では終わらないと考えていたと思う。だから私が
「ありがとう、今日はこれで」と言った時には「えっ」という顔をしてい
た。
それからというもの、彼女の腋毛処理をさせてもらっている。契約では腋
毛だけは自分で処理してはいけないことになっている。これからどんどん暑
くなり、薄着の季節になってくる。彼女と会う機会も増えるはずだ。毛を剃
るだけだから時間はそれほどかからない。短いが充実した時間だ。他に何も
されないと知った彼女も、今では安心して来るようになった。
この奇妙な儀式の間、彼女は興奮していると思う。顔を見れば分かる。た
ぶん濡らしているだろう。契約では腋毛だけなのだが、いつか下の毛につい
ても相談してみるつもりだ。無理強いはしないつもりだが、おそらく彼女は
受け入れるだろう。