40代後半の頃の話。
一緒に仕事をするようになって一年程が過ぎた頃、既婚者の自分に擦り寄ってきたのは彼女の方からだった。
「私じゃダメですか?」
職場仲間との飲み会の際にこうこっそり囁かれた。
彼女はアラフォーのバツイチだったが、整った綺麗な顔と小柄ながらメリハリのあるスタイルをしていて、ずっと気にはなっていた。
ダメなことはないが、良いわけもない。
答えに迷いその日は回答せずに濁したが、男と女の関係になるのにそう時間はかからなかった。
同じ職場で仕事をし、帰りに会社の外で待ち合わせてはホテルへ通った。
最初は飲んでからホテルの流れだったが、お互いに性欲が強くさっさとホテルに行きたいという想いが一致したためだった。
一度ホテルに入ると5~6時間滞在するのが当たり前で、いつも終電もなくなりタクシー帰りだった。
自分も彼女もゴムを嫌い、生ハメ外出しが定番だったが、彼女は全裸にならずいつもキャミは身に着けていたがキャミに精液が掛かることは気にしていなかった。
むしろ汚されるのを好んでいたように思う。
仕事ぶりからは想像もしなかったが彼女はドMだった。
フェラでは自ら根元まで咥えて喉に挿れていたし、乳首を潰れるほどに摘まれるのを望んだ。
私の勃ちが悪かったとき、彼女自ら「見てて」と言いながら自分の綺麗な顔にペニスを擦り付けたこともあった。
そんな彼女とのセックスは快楽以上に幸福感に溢れ、2度、3度と交わることも珍しくなかった。
彼女とセックスするようになる前、長い間レスであったが、彼女とセックスするようになってからはハイペースだった。
週1~2回は密会し、会えば5~6時間は交わりっぱなし。
最初の頃はお互いに翌朝会社で会うと、「足腰がガクガクだね」とこっそり囁き合うほどだった。
付き合って少し経つと彼女の変化に気付いた。
ホテルで過ごすまではいつも通りだったが、帰るときになると表情が消えていた。
次に会ったときも、その次も同じ。
さっきまでの明るくてエッチな彼女とは別人のように、無口で無表情になり俯いたまま目も合わせずにタクシーに消えていった。
彼女は、私が妻の元に帰っていくのが堪らなくなっていた。
2人でどんなに楽しく過ごしても、どんなに愛し合っても自分ではない女の所へ帰っていくのが耐えられなくなっていた。
既婚なのはわかってるし、そういうのも大丈夫だからと言い、日陰の女に徹していた彼女だったが、いつしか本気になり過ぎてしまっていた。
彼女から「このままでは惨めなだけだからもう会わない」と告げられた。
私から言える言葉は無かった。
その後、お互いに職場も変わり、もう顔を合わす機会もないし、連絡を取り合うこともないが、5年以上経った今でも私はまだ彼女を忘れることが出来ない。
許されるなら今でも会いたくて堪らない。
私もまたいつの間にか彼女に本気になり過ぎていた。