彼が訪ねてきて、いつものようにキス、二人でシャワー浴びて、ベッドに入った。
ヤッてることは、いtもと何も変わらないけど、ムードがないし、愛が感じられない。
あなたの愛撫、惰性のよう、あなたのクンニ、義務のよう、気持ちいいけど感動しない、きっと私のフェラも愛情がなかったと思う。
コンドームを被せる彼、めんどくさそうに見えた。
彼が入ってきた時、なぜか、これが最後なんじゃないかと思った。
彼とのセックスが楽しみで、待ち遠しかったあの頃、彼が来たのを足音で感じて、玄関に走ってたあの頃、今は、そんなときめきも無くなった。
新しい恋が生まれたときは、心躍ったけど、今、その恋が消えかかっているみたい。
彼が腰を振るたび気持ちいい、それは物理的な快感、気持ちは、させてあげてるって感じで、共に愛し合う歓びが感じられなかった。
見つめ合う目が、哀しみを帯びてた。
彼が果てた後、切ないほどシラ~ッとした空気になった。
そういうことが、数週間続いてた。
その数か月前から、何となく私たちの関係がすれ違うようになってたの、感じてた。
コンドームを始末した後、彼は身支度を整え始めた。
昔のように、余韻を楽しむことが無いどころか、彼は帰ろうとさえしてた。
もう、終わりなんだなって、分かった。
彼が立って、玄関に向かって歩いていく。
「さよなら」も言えない別れ、私は、彼にとってもう「さよならを言う価値もない女」なのだろうか。
黙って出て行く彼を、私は、ベッドの中で、ただぼんやりと見てただけだった。
虚しいお別れ、たぶん、もう、二度と連絡もすることないだろう彼との終わり。
私もベッドから起きて、シャワーを浴びた。
そして、一人、彼と歩いた駅前の通りを歩いた。
私は、彼と出会う前に、一人でこの通りを歩いていた頃の気持ちに戻りたかった。
大学を出た後、この街に越してきて、新しい一人暮らしを始めて歩いていた道の続きを探していた。
そうすれば、彼を忘れられると思った。
やり直したいわけじゃない。
でも、好きな気持ちが消えたわけでもない。
伝わらなくなっただけ…
この通りを歩くと、そんな思いが蘇る。
彼は今、どうしてるかな?
もう、別れて2年、付き合ってた時間と並んだ。
今まで、連絡も、再会もない。
でも、忘れたこともないし、この通りを歩くたび思い出す。
彼と入ったお店、買い物したスーパー、みんなあの頃のままだ。
ねえ、仕事頑張ってる?
出会ってから一緒にいた2年間、色々あったね。
私ね、今度、この街を出ていこうと思ってる。
彼の想い出が詰まったあの部屋も、一緒に歩いた通りも、私には辛すぎる。
故里に戻って、今の会社よりは小さいけど、同業に中途採用が決まったから…
やっぱり私には、東京は似合わないや。
4年間歩いたこの通りが、ブルーに感じるようになった。
彼と歩いていた時は輝いて見えたポケットパークの噴水にあるヴィーナス像も、ブルーに染まる。
そんな街にいたくないから、出て行くことにした。
ここを出て行くことは、彼には言わない。
さよなら…
元気でね…