君と最後のデートをしてから、三十数年も過ぎた。
あの頃、僕は町役場の技師で、佐護湯服とヘルメット姿で町道拡幅工事の現場監督してた。
君のお父さんは証券マンで、後にバブルと言われたあの頃、年収は僕の4倍だった。
結婚したいと挨拶に行ったら、
「安月給の役場のドカタに娘をやれるか!」
と言われて、思い切りお茶かけられたんだ。
僕は、黙って君の家を出ていった。
僕は、君との接触を絶ったけど、まだ、携帯電話のない時代だから、僕のアパートの電話にかけられた君からの電話には、出ざるを得なかった。
「ごめんね。悔しかったよね。もう、終わりにしたい気持ちh分かるけど、お別れ、ちゃんとしたい。最後のデート、して欲しい。」
と言われ、次の日曜日、君とした最後のデート、今も覚えてるよ。
君と一番たくさん行ったレストランでランチして、君と一番たくさん行ったラブホで最後のセックスしたんだ。
君のまろやかな裸身、オマンコ、見納めとばかりに脳裏に焼き付けたっけな。
焼き付けすぎて、今でも忘れられないや。
ふやけるほど69で舐め合って、最後のセックスは安全日じゃなかったけど、マイルーラ入れて生で入れたんだ。
君との最後のセックス、射精したら終わる切ないセックス、見つめ合いながら、
「最後の精液、どこに出す?」
「いつもと同じ、お腹にかけて…」
ラブホを出たら、もう薄暗くて、君と一番たくさん行った居酒屋で、僕と君は別れの杯を酌み交わしたんだ。
僕の好きなもつ煮、君の好きな肉豆腐、枝豆、焼き鳥…
居酒屋を出て、君の家にほど近い公園のジャングルジムの前で、最後のキス…お別れのキス…
さよならは言わなかったけど、僕は、君が家の原案に入るとき、こっちを見て手を振ったのに振り返して、公園を後にした。
アパートに帰って、一人、嗚咽した。
町内に実家はあったけど、兄貴夫婦が住んでるから僕は家を出てたので、惨めな姿を見せずに済んだ。
あれから、君に会うことはなかった。
僕は、君と別れた後、町役場で臨時職員をしてた女の子に告られて、君を忘れようと付き合った。
すごく良い人で、気立ても良くて、領地上手でその子と結婚したんだ。
その子、箱入り娘で処女だったし、あの時代、成人した処女は珍しかったからね。
ほのぼのとした幸せの中、家族も増えて、君のことも忘れかけていた。
そしたら、いつの間にか役場職員が安月給から高給取りになってて、やがて隣の県庁所在地と合併して、いつしか僕は巨大な市役所庁舎の中で勤務してた。
この間、仕事で君の家の近くに行ったんだ。
三十数年過ぎたのに、あの頃のままだったよ。
ただ、君の実家、君とは違う名字の表札がかかってた。
そういえば、君のお父さんの証券会社、昔、廃業したんだよね。
それで、家屋敷を手ば明日んだろうと思た。
懐かしい街並みを、暗い気持であるったことを、ここに書き記しておくよ。
今はどこに居るかわからない、遠い昔愛した君との思い出を…