たった一ヶ月だけ付き合っていたのですが別れました。
その時、俺は15歳でした。彼女(沙羅)は14歳でした。
きっかけはエロサイトの掲示板の沙羅の書き込みにアド付きでレスして、沙羅からメールが来たことがきっかけでした。
最初は「もしかしたら男なんじゃないか…」と疑ってましたが、その日の深夜から明け方までメールとか写メとかで仲良くなりました。
俺も本気で好きになった。
沙羅は俺の事、遊びなのか本気だったのか解りません。
「会いたい」というメールを二人の間でずっと交わしていました。
そして初めて沙羅からメールが来た4日目に会いに行きました。沙羅が住んでいたのは隣の県で着くまでには5時間ぐらいでした。
もちろん夜遅くに着きました。お互いにまだ学生で親も居ます。
俺には母親、沙羅には父親が一緒でした。
道も分からないまま、知らない街の中、待ち合わせしたのは駅でした。
お互いの顔はしていましたが、写メよりは少し印象が違いました。でも俺はその時から無口でシャイだったので沙羅の親に挨拶すら出来ませんでした。
沙羅とは「はじめまして」のような挨拶も無く、夜のファミレスや本屋、ゲーム店を親と回っていました。店の中では二人で歩いていました。
ただ、お互いに恥ずかしがって手も握ることが出来ませんでした。
その日はホテルに泊まることになりました。小さい部屋です。
もちろん母親と。ちなみに普通のホテルですから。
沙羅のケータイは一日に決められた数のメールしか出来ないようで、日付が変わってからすぐにメールが来ました。
「明日、デート出来なくなりました。ごめんなさい」
沙羅の父親にまともに挨拶も出来なかった事で沙羅の父親がデートに反対したようでした。
仕方なく沙羅とのデートを諦めて帰りました。
家に戻ったその日から沙羅と電話するようになり、一緒に電話でオナニーとかしてました。
普通に「一生愛してる」とか言い合って、幸せに過ごしていましたが、沙羅の受験勉強が始まり、父親にケータイを取られてしまいました。もちろんメールは出来なくなり、沙羅の家からの電話だけになりました。
沙羅の父親は少し怖い人らしく門限などの縛りも酷かったようです。
家の電話の子機も隠されて夜中から明け方まで両方から掛け合っていた電話も出来なくなりました。
徐々に電話する時間も無くなり、三日に一度、五日に一度と間が開くようになってしまいました。
その間も、沙羅が公衆電話や自宅の親機で数分しか電話出来なくなっていました。
それでも沙羅は「受験が終わればずっとメールも電話も出来るよ」「私が高校卒業したら一緒に住んで結婚しようね」って言ってくれていました。
俺も沙羅もメールや電話の代わりに手紙を交換することになりました。
沙羅は手作りのケータイストラップを手紙の中に入れて俺にくれました。
俺も沙羅の為に、一万もしない安いペアの指輪を買って指輪に入れて渡しました。
「ありがとっ!学校で自慢しちゃった」と電話で言ってくれました。
本当に嬉しかったです。まるで自分が世界で一番幸せなんじゃないかと錯覚するぐらい。
その時は沙羅との未来しか見えてなかったと思います。
しかし手紙も沙羅の父親に見つかってしまい、指輪も沙羅が無理矢理書かされた手紙と共に戻ってきました。
沙羅が電話で「手紙の内容は嘘だからね。書かされたの……。それとも本当に別れたい?」と言われました。
本当に沙羅が好きで、別れたくなかったので、俺はそれを拒否した。
「ゆう。ありがとう…」
10月15日の17時を少し過ぎた時に沙羅からの電話が来ました。
久しぶりだったので少しテンション高く出ました。
「ねぇ、ゆう。やっぱり別れよ……」
意味が分かりませんでした。前に別れたくないって言ったのに……意味が分かりませんでした。
「何で?」
「親が反対してるから……」
別れたくない。この時、そう言えていれば、今も幸せだったのかも知れません。
しかし俺は何の空気を読んだのか、沙羅の幸せだけを願っていた。
「分かった……」
「ごめんね」
電話が切れました。
ツーツーという音も聞かないですぐにケータイを閉じました。
俺は一年前からひきこもりだった。沙羅は中学生。
でもそんなの関係なしに俺を受け入れてくれた沙羅が好きでした。
毎日、ふと沙羅を思い出しては泣いてしまうほどに好きでした。
その後、ケータイのアドを変えました。
変わったアドと指輪を手紙に入れて沙羅に送った。
2月15日に沙羅からメールが来ました。
ケータイからのメールでした。
前のケータイ会社ではありませんでしたが、沙羅からのメールでした。
しかし沙羅にはもう他に好きな人が居るようで、やり直すことは出来ませんでした。
次の日も、また次の日も、ただの友達として沙羅に毎日二通ぐらい送っていました。
片思いでもよかった。初めて「好き」って言ってくれた沙羅と友達でも良いからメールがしたかった。
でもメールは15日以降帰ってくる事はありませんでした。
3月14日、いつものようにメールを送りましたが、沙羅には届きませんでした。
また相変わらず俺は泣いていた。
その後、またアドが変えて沙羅に、俺の気持ちとアドを書いた手紙を送りました。
もう沙羅からのメールが来る事は恐らく無いでしょう。
電話も来る事は無いでしょう。
だけど沙羅の幸せを心から願っています。
あの時、挨拶出来ていたらデート出来たのかも知れない。
あの時、別れたくないって言えれば別れなかったのかも知れない。
今でもまだ沙羅を想って泣いています。
ふと沙羅からのメールが来るかも。それだけが最後に残った希望です。
こんな長くて面白くない話しを見てくださって感謝します。
落ちはありません。ハッピーエンドでもありません。
ただ、俺には、沙羅と付き合った幸せな一ヶ月が存在していた事を刻みます。
ありがとうございました!
約半年前の幸せで最後の恋愛でした。