<2017年冬ごろ>俺は知人である「濱田氏」(52)という人物から、突然「秋本君。今、自由に動ける身だったりする?」という突然、意味不明な電話がかかってきたんだ。もともと濱田氏という人物との付き合いは5年くらいで、最初はスポーツジムで知り合った個人的な飲み仲間っていう間柄だった。濱田氏がいうには、濱田氏の知り合いの「T社長」(50)という人物(会社経営者)が始めた新しい事業で「遺体搬送専門業」の立ち上げスタッフを募集しているという話だったんだ。秋本「遺体搬送業??? ってなんすかそれww」濱田氏がいうにはこうだった。ここは詳しくは話す必要がないとおもうので敢えて割愛するが、もともとT社長っていうのが車関係の会社の社長(けっこう大きい会社)であり、その社長が会社の子会社ではなく、あくまで個人的に始めた事業が遺体搬送っていう特殊な事業だったんだ。その理由としては、今となっては高齢者社会に突入して久しく、社長いわく「今の葬儀業界は、霊柩車や寝台車を持っていない小さな葬儀会社が雨後の筍のように増えている」という見解から、だったらそんな小さな葬儀会社からの需要がある「霊柩車や寝台車での搬送のみ」を提供する業種があってもいいんじゃないか。っていうとこだった。その特殊搬送の会社をT社長がもともとやっていた大会社の子会社としないのは、特殊な業界ともともとの会社がリンクしてしまったら、企業イメージが損なわれるという理由からなんだと思う。そんな特殊な業界にリクルートされた俺は、濱田氏のいう「これからの会社なので秋本くんの将来にとってもいいんじゃないかな?なによりこれから入っていく人はみんな君より後の人だからさ」と、つまり濱田氏が言いたいのは、今のママだったらいつまでたっても平社員。ここで覚悟をきめてコッチにこれば、小さな会社とはいえど最初から管理職としてのスタートになる。という呼びかけだったんだ。それから俺はその時に働いていた会社を辞め、濱田氏と共にT社長が個人的に経営するという特殊搬送の業界で働くことにしたんだ。といっても、ゼロからのスタートだった。霊柩車とか寝台車といった車両関係においてはもともと自動車業界の社長が用意するとして、俺と濱田氏との最初の2人で募集広告に求人情報を出したり、会社事務所や車庫を作っていくっていうそういった段階からスタートしていったんだ。そんなこんなで、やっぱ資金があるっていうのは心強いもので、あらゆる事に時間がかかったが、ものの2、3か月で寝台車も5台集まったし、それを常時、入庫させている営業所も用意する事が出来た。そして実際にそれを運転するドライバーも7~8名程採用する事も出来たし、最初は仕事はあまりなかったが、着々と小さな葬儀会社からの依頼が入ってくるようになってきたんだ。だが、、ちょっとした不安があったんだ。この会社、立ち上げたばかりだから世間一般でいう、、「法的な届け出」というものが不完全だったんだよな。一言でいうと、社会保険労務士とかが作った法律にのっとった就業規則を労基に提出して、働いている人間に雇用保険、社会保険、年金などの支払っていく。そういった「会社としては当たり前の法を守る事」が出来てない会社だった。言い換えれば、給料は手渡し。所得税の差し引きもなし。残業手当もなし。あくまで、社長が個人的にやってる趣味のような仕事なので「仕事もまだ軌道に乗ってないし、今はまだその段階じゃない。法的な手続きはこれからやっていく。今はとりあえず知り合いの引っ越しを手伝って、お礼として1万円もらったというレベルの認識でいてくれたらいい。そのうちちゃんとする。」っていう社長の言葉を信じて今は各種の福利厚生がなくても働いていたんだ。唯一、やっていた事といえばB型肝炎の予防接種くらいのものか。そこで働いているドライバーの一部(30代~65歳くらいまでの男女)は逆に、「届け出とかしない今のままでいい」なんていう始末。理由としては、給料が手渡しだったら生活保護をもらっているのがバレないから。所得税で引かれるのがもったいない。もらう年金が少なくなる。といった、あたかも専業主婦や定年後のアルバイト、生活保護といった問題アリの人からすれば「ブラック企業のままのほうよかった」んだと思う。だが俺は違った。その中で働いている「まともな社会人の感覚」もった俺たちは違った。(何かおかしいぞこの会社・・・。大丈夫かよ・・・)と思いながらも、仕事自体は楽。そんなに仕事があるわけじゃないし、そもそも「特殊なもの」っていうものにさえ抵抗がなければ、ほんのちょっと病院からイタイの安置場所(葬儀会館とか自宅とか公民館とか)に搬送するだけで、それなりの報酬をもらう事が出来たんだ。結局、それから社長がのらりくらりと、いつまで経っても会社としての手続きを行わないまま、、そもそも怪しい小さな葬儀会社の手先で搬送業のみを提供する状態でありながら
...省略されました。