数年付き合った彼と、まだ付き合ったばかりの頃。話している間は女性慣れしている感じがあって、チャラそうな人だな、と思っていたのに実際付き合ってみると手を繋ぐのにも慎重で、照れ笑いをして見せるような…そんな可愛い人だった。
それは付き合って1週間くらいの時。初めて私の家に来て出前を頼み、ご飯を食べたり動画を見たり、いつも車で色々な所へ連れて行って貰っている分も、その日は日常を楽しむ様に2人で何をするでもなくのんびり穏やかな時間を過ごしていた。
彼氏くんがふと欠伸をして、眠いのかな?と思い声を掛けるとちょっと横になりたいな、なんて甘える様にこちらを見る。もしかしたらこのまま体の関係に…そんな期待に胸が高鳴るまま、2人でベッドに潜り込んだ。
が、結局その時は何も無いまま、可愛い寝顔を見ることになる。この状況で何も無いって、私に魅力が無いの…?と少し悲しくなったけど私自身もそう間もなく眠ったように思う。
その後も何だかんだとのんびり過ごして、いよいよ彼氏くんが帰ろうと言う時。私がふと寂しくて泣き出してしまった。恥ずかしい、それに面倒な女だと思われる、そう思うと一層涙は止まらなくて。
そんな私を抱き寄せ、その瞬間に初めてキスをした。何度も触れ合う唇、低く掠れた声も、漏れる吐息も。舌が擦り合わされる度頭が蕩けて、気が付けば下着の中が濡れて意味を成さないくらいびしょびしょになってしまった。立っていられなくて彼の服を夢中で掴み、縋るのでもう精一杯。これ以上は…と逃れようとしても強く抱き締められ、頭に添えられた手が私を逃す事はなかった。
どれくらいそうしていたのか、一瞬にも、酷く長い時間にも思えたキスをしている間、抱き寄せられ密着した状況では否応にも彼の熱くなったモノが私の腹部に当たり、我慢できなくなった私はそこに手を伸ばす。
でも、それを許さなかった彼に捕まえられた手、絡められた指。唾液が互いの舌を繋ぐ糸を引き、それが途切れてから。先程までの逢瀬が嘘の様に優しげな目で笑い、
『寂しかったら明日も会いに来るから、』
それだけを言い残し、もう一度私を抱きしめ頭を撫でてから帰って行った。
彼に今日はありがとう、とLINEを送ってから、熱の冷めやらぬ儘に1人でしたのは言わずもがな。その彼と最後までしたのはその日から1ヶ月以上は先のお話だったと思う。彼曰く、何度もこのままシたい……と思う事はあったらしいが大切にしたい一心で我慢してくれていたらしい。
年月が経った今でもあの欲が滲む瞳や逃れようの無いほどに求められる快楽が忘れられなくて、どんなセックスよりも気持ちが良かったあのキスを、ふと思い出してしまう。