先日、お客様からお祭りに行きませんか?とお誘いを受けました。お子さんもご一緒にと言われましたので息子に聞くと、「家でゲームしている方がいい」と言われましたので、お客様と私の2人でお祭りに行くことにしました。
身長が低い私は、浴衣を着るとかなり幼く見えるみたいですが、私は浴衣を着ることが出来る夏がやっぱり好きだなと思います。
年配のお客様ですので、身だしなみには特に気をつけようと、浴衣って下着のラインが浮かび上がると下品に思っていますので、ノーブラノーパンで着るのが私の中では当たり前でした。
普段から髪の毛は下ろしていることが多いのですが、この日は髪をアップにしてうなじを出して少し大人の色気を出そうと思っていました。
「りんごさん、今日は一段と綺麗ですね。」
第一声、彼からこのような言葉をかけられました。
「ありがとうございます」
私は素直に喜びました。彼の車の助手席に座り車内で色々とお話をしました。お店ではお客様の個人情報をむやみやたらに聞くことは失礼なので、彼がどのような人かは身なりと言葉遣いで判断していましたが、その判断が間違っていなかったということがわかりました。
奥様に先立たれたようで、そこから彼は女性との関係を一度も持ったことがなかったようでした。そんな彼がなぜ私をお誘いして下さったのか?それは、私が奥様とすごく雰囲気が似ているということからだそうでした。
彼に見せて頂いた奥様のお写真…
どことなく私に見た目も似ていて、確かに雰囲気も似ているかもと思いました。
彼は運転しながらも、私の方を何度も見ては笑みを浮かべていました。そんな彼の姿を見た私もどこか嬉しく思いました。
いつのまにか、彼は私の顔を見るというよりは私の胸元に視線を注いでいるのが感じられました。
何度か座り直していたせいなのか、浴衣の左前身ごろの襟が少し浮いていました。私の角度からは彼からどのように見えているかは分かりませんでしたが、おそらく胸の膨らみは見えていたかと思います。
しばらくお話をしていると車は会場近くの駐車場に着きました。私は車から降り、彼の横に立ち並んで歩きました。
「昔はこうして家内と祭りに来てはゆっくりとした時間を過ごしたものです。家内に旅立たれた後は、毎年一人で足を運んでいましたが、悲しみだけが増していく感じがしていました。あなたを見かけたから、私の中で少しずつ恋心のような気持ちが芽生えてきました。あなたにはお子さんもいらっしゃって、あなたの家族があるのもお聞きして知っています。でも、どうしてもあなたをお誘いしたかった…今日は本当にありがとうございます。」
彼の奥様に対する愛情がものすごく大きかったのだと思い、自然と涙が溢れてきました。
「りんごさん、もし私のわがままを聞いて下さるのでしたら、今日一日だけ私の家内になって下さい。そしたら、私も未練がましくなく生きていけると思います。」
彼の気持ちに応えるかのようにして私はそっと彼の腕にしがみつきました。
「いいのですか?」
「はい。何とお呼びしたらよろしいですか?」
「あっ…、孝明と呼んでください」
「孝明さん、行きましょう。今日だけは私のことを、えーっと…」
「さゆり」
「さゆりと呼んで下さい」
「じゃあ、さゆり行こうか?」
「はい、孝明さん」
私たちは人が溢れている中、長年付き添った夫婦のようにくっつき会話をしながら、祭りの賑やかさの中歩いていました。
「さゆり、何食べる?」
「うーん、かき氷」
「ほんとにさゆりと一緒にいてるみたいだ。さゆりも祭りに来ると必ずかき氷を食べていました。」
彼の顔はにこやかでしたが、その目には涙が溢れていました。
賑やかな雰囲気の中、楽しそうな顔をした人たちがいてる中、そろそろ会場を出ることにしました。
「孝明さん、祭りの後は奥様とどこに行かれていたのですか?」
「えっ?あのぉ…えーっと…」
「はっきりおっしゃって下さい。」
「はい、あのぉ…でも…」
「孝明さん」
「はい、二人でホテルに行ってました。」
「素直でよろしい(笑)今日は私が孝明さんの妻ですよ。孝明さんの好きなようにして下さい」
「本当にいいのですか?」
「さゆりの言うことを聞いてくださらないのですか?」
「あっ、いやっ、そんなことはない。本当にホテルに行ってもよろしいのですか?」
「じゃあ帰ります?」
「いやいや、行きます行きます。」
「うん、たっぷりさゆりを楽しませて下さいね。」
そうして、私たちはホテルに向かいました。