夜9時過ぎ、車で近所の銭湯に出かけました。
夫の転職に伴い現在の住所に越して来て早5年。
新しい生活環境にも慣れて、去年からはパートの仕事に出ています。
5年前まで住んでいた温泉町では近所の共同湯に通っていたので、今でも市内の銭湯を週に一度は利用します。
自宅にお風呂はあっても、白いタイル貼りの洗い場でカラダを隅々まで丹念に洗い、熱めのお湯をたっぷり湛えた浴槽にゆっくり浸って心身ともにリラックスすることは、日常生活におけるささやかな贅沢です。
家から車で10分弱の距離にある銭湯は、男女で建物の入り口が分かれている番台式のお店で、ご主人と女将さんが交代で座っています。
いつもは夫と一緒に利用するのですが、帰りが遅くなるという連絡があったので一人で出かけました。
番台はご主人で、遅い時間帯のせいか女湯は私一人でした。
ブラを外してタイツとショーツを一緒に脱ぐと、レトロな体重計にタオルで前を隠すことなく乗りました。
脱衣場に衝立やカーテンがないので、番台のご主人には全裸の私が丸見えでしょう。
お店を利用し始めた頃は、ご主人が気になって番台の様子をそっと窺ったりしたものですが、やがて抵抗感は薄れていきました。
正直言うと、今でも番台がご主人だと意識してしまうのですが、気にすると利用できなくなりますし、気にしている素振りを見せるのも悪いので堂々と裸を晒しています。
現在の住所に越して来るまで、番台式銭湯を利用したことはありませんでした。
10年近く暮らした温泉町の共同湯はフロント式だったので、銭湯に番台があることは知っていても、そこに男が座っていようとは想像すらしていませんでした。
それだけに初めてお店を利用した日、夫でもない男の人の前で服を脱いで裸になるという、女にとっては羞恥の極みのような状況に愕然としました。
ただ羞恥心と緊張感が入り混じったような気持ちを味わいつつ、番台の店主に初めて裸を晒したときも、タオルで前を隠すような真似はしませんでした。
40歳を過ぎた女が若い娘のような真似をしたら、ご主人や他の女性客から「自意識過剰」と笑われそうな気がしたからです。
ただ入浴を済ませて脱衣場に出て来たとき、前も隠していない私の裸をご主人は番台からジロッと見ました。
女性客の裸を見慣れたご主人も、「初物」のカラダには欲望を覚えたのでしょうか。
話を現在に戻します。
洗い場から出たとき、店の時計は閉店時間の5分前を指しており、ご主人は番台から女湯の脱衣場に降りて後片付けをしていました。
いつものように前を隠すことなく脱衣場に出て来た私を、ご主人はジッと見ました。
隣の男湯にも人の気配はなく、広くはない女湯の脱衣場に全裸の私は夫でもない男の人と二人切りです。
その場でご主人に押し倒され、犯されても不思議ではない状況に警戒感というより、自分がAV女優にでもなったかのような錯覚を覚えました。
むろん何事もなく、帰り道にコンビニに立ち寄って酎ハイを買いました。
銭湯帰りはノーブラなので乳首の突起が目立つらしく、胸元に注がれたレジの若い店員の視線が気になります。
ついさっきまで銭湯のご主人には全裸の姿を堂々と晒していたというのに、この違いは一体何だろうと思いました。