あなたは...かつて「テレクラ」という文化が存在した事をご存知でしょうか?
今でも時折見かけるその怪しげな店。
男が金を払い、今のネカフェの狭めな部屋に入り...ただひたすらワンチャンを狙い、女の子からの電話を待ち出会いを探すと言う完全受け身の風俗。
そこで起きた恐ろしい出来事を話そうと思います。
かれこれ20年以上前の話です。
僕は、当時の職場の先輩(ナンパの達人)の
「テレクラやばいよ!マジで釣れるから!」
という言葉を鵜呑みにして、テレクラ通いの日々を過ごしていました。
それなりに美味しい思いもしていたので、完全にハマっていたのです。
ある日、僕は錦糸町のテレクラにいました。普段はあまり行かないエリアなのですが、その日は
「たまには新規開拓してみよう」
なんて軽い気持ちで遠征テレクラと洒落こんでいたのです。
ところが...なかなか電話は鳴らず、ただ時間だけが過ぎていきます。
特に焦る気持ちは無かったのですが、単純に退屈になってきました。なにしろ当時はインターネットもさほど普及しておらず、部屋には電話とテレビしかないのですから。
「いやぁ...もう帰ろうかなぁ...」
そう何度も繰り返し考えていると...鳴りました!その日一度目の電話です。
「もしもし...はじめまして!」
電話の相手はめちゃくちゃ声の可愛い人でした。歳は20代半ばと言った所でしょうか。
何分昔の話なので何を話したのか覚えてませんが、とにかく意気投合して
「これから会おうか!」
という流れになりました。
(よっしゃよっしゃよっしゃー!久しぶりに当たりの予感がするぞー!!)
僕はテンションMAXのまま、待ち合わせした隣駅の亀戸に向かいました。
待ち合わせ場所は駅にほど近いカフェヴェローチェだかなんだかでした。
コーヒーを飲みながらウキウキして待っていると
「あの...瑞貴さんですか?」
聞き覚えのある可愛い声。
(来たよコレ!作ってない可愛い声だ!)
満面の笑みで振り返ると...
そこには、ドラゴンボールに出てきた
バクテリアン 検索
もしくは
丹古母鬼馬二 検索
がヒゲを剃って女装したような人がいたのです。
「えっ...あっ...えっと...」
テレクラの鉄則に
「待ち合わせ時の特徴はあまりハッキリ言わない」
というのがあったのですが、その日はウッカリ詳細な特徴を伝えてしまったので逃げようがありません。
上辺だけの会話をコーヒーで流し込み、店の外に出ます。
「ね、今日はどこに連れてってくれるの?」
頼むから歯を磨いてから来てくれよと彼女の笑顔を見ながら思う僕。
電話を切る間際、スケベな話題で盛り上がったのでバクテリアンはやる気満々です。
(どうするか...そこらの非常階段か何かで穴だけ使うか...けど、コイツ見た目とかめっちゃ嘘ついてるもんな...第一、プライドが許さない!無理!!)
その時です。
「あっ、待って!なんかポケベル鳴った!ちょっと電話してもいい?」
と丹古母鬼馬二。
僕は一秒間に30回くらいの勢いで頷きました。そして、公衆電話のある北口のロータリーへ。
「この辺で待ってるね!」
そう言った僕は、彼女が公衆電話から電話をかけ始めると同時にダッシュで逃げました。
(待てよ...そもそもこっちは特徴を正直に話したのだし、何も悪いことしてないじゃんか!そもそもどうやったら華原朋美とバクテリアンが似てるってことになるんだよ!!)
フツフツと怒りが込み上げます。
僕は、電話ボックスの目の前にある駅ビルに入り4階まで行きました。そして、奴がいる電話ボックスを見下ろしました。
バクテリアン...いや、丹古母鬼馬二...もうどうで良いのですが、奴は電話ボックスから出ると辺りを必死で探しています。
「あばよ、お嬢さん...良き出会いを!」
そう心の中で呟くと、僕は総武線に乗り亀戸から逃げるように立ち去ったのです。
(男女ともに嘘は良くないよ!本当に!)
というお話でした。ご精読、ありがとうございました!