今から15年以上前のお話です。
随分と昔の話でもあるので、記憶が曖昧な部分もありますが、覚えている範囲で出来るだけ正確に書きたいと思います。
忘れもしません。
私は半年前に出産し、育児と家事に日々追われつつも、幸せな毎日を過ごしていました。
1月の寒い日にそれは起きました。
いつもなら夕方には帰宅する主人が、その日は22時過ぎに帰宅しました。
遅くなるという連絡もなかったし、憔悴した顔で帰ってきたので、心配したよ!何かあったの?と声を掛けましたが、大丈夫。何でもないよ。との返事。
何か変だとは思いましたが、主人は仕事の話や愚痴を一切家庭では喋ったりしていなかったので、それ以上の事は聞けなかったし聞きもしませんでした。
翌日、いつも通りに早朝から主人のお弁当を作り、主人を起こしにいくと、今日は体調が悪いから休むとの返事があり、昨晩の事もあり、疲れか何かあって身体辛いんだろうなぁ。でも買い物とか付き合ってもらえるかも。とか呑気な事を考えていました。
主人はずっとベットの中に居て、何もせずにジッとしたままでした。
時計が9時を指す頃になっても起きてこなかったので、会社に連絡しないの?体調悪くて休むって連絡しなきゃダメなんじゃない?って言ったんですが、うん。判ったって言うばかりで一向に連絡しません。
変だなぁ?とは思いましたが、私が連絡するわけにもいかず、結局は無断欠勤(と私は思ってた)となりました。
こんな状態が2日続いて、流石に心配になり、病院に行くように促したのですが、あぁ判ったと返事はするものの、一向に病院へも行かず、また外出も全くせず、ずっと寝室に閉じ籠っていました。
私は、まだ幼かった子供の世話でいっぱいっぱいで、正直旦那の事は見ていませんでした。
無断欠勤が3日目になった日の夕方、1本の電話が掛かってきました。
主人が勤める会社からでした。
電話に出たのは私でしたが、ご主人と話がありますとの事で直ぐに主人に電話を代わり、側で話を聞こうとすると、主人にあっち行っててと言われ、寝室から出て電話が終わるのを待ってました。
5分ほど経つと主人が寝室から出て来て、話があると言われ、リビングで話をすることになりました。
実は会社で大きなミスをしてしまい、今は自宅待機を命じられていること。
相手の会社から損害賠償請求をされていて、会社が対応に苦慮していること。
明らかな施工ミスの為、何かしらの処分を考えていること。
最悪の場合は、諭旨解雇になることもあり得ると伝えられたこと。
この話を打ち明けられ、正直、何故会社は守ってくれないのか、もし仕事を辞めさせられたらどうやって生活していくのか等、色々と考え主人と沢山話をしました。
主人は、自身がミスをしたから仕方ない。でもこの業界しか知らないからこの業界でやっていきたいと話していました。
2人だけでは知恵も出ず、お互いの両親にも相談しましたが、全く畑違いの職業だった為、いいアドバイスも貰えずにいました。
自宅謹慎が1週間経った日にその話はやって来ました。
その日、主人は上司に呼び出されて会社へと行きました。
時間にして一時間もせずに帰って来て、開口一番、俺会社辞める。と私に告げました。
私はビックリして、本気なの?生活は?仕事は?と矢継ぎ早に質問しましたが、主人は何とかするの一点張りで話になりません。
余りに話にならないので、質問を変えて、今日会社で何があったの?どんな話をしてきたの?と聞きました。
最初ははぐらかそうとしてた主人ですが、あなたの問題は私の問題でもあるんだから、正直に話してと何度も説得したところ、渋々話をしてくれました。
会社では、直属の上司の課長、部長の2人が面談という形で話をした。要約すると損害賠償は会社で支払いをする。申し訳ないが主人は諭旨免職とする。との話だったと言いました。
ただ、上司は、たった1つのミスで解雇するのも可哀想だし、子供も幼いので、何か残れる方法は無いか考えた結果、課長と部長の連盟で上申書を提出して、訓告だけに留めて欲しい旨を伝えてもいいと。
但し、今回の件で課長、部長共に責任を取らされ減俸処分を受け、始末書も提出している立場上主人を会社に残すのは非常に高いリスクを負うことになると。
その交換条件で、私を1日自由にさせることを条件に出してきたそうです。
主人はそんな事はさせられないと、直ぐに断って諭旨免職を受け入れ帰ってきたそうです。