美姫と会った。駅前のドトールで待ち合わせて久しぶり~とか軽く話してから地下鉄で3つ先まで行った。初めて来る所だったけど2人とも特に行きたい所はなかった。
思い出話をしながら歩いていると、道幅が広くなり、気付けば広い公園に入っていた。昼も過ぎて、夕方が近くなってきた静かなその公園を、2人でしばらく歩いた。
大きな池とかもあって、本当に静かだね。などと話していると段々会話も途切れがちになってくる。2人とも歩き疲れたので、トイレ脇にある自販機で俺はコーヒー、美姫はレモンティーを買ってベンチに腰かけた。
明らかに中学の時の騒ぎまくってた友達同士の雰囲気ではなくなっていた。嫌いじゃないけど得意でもない雰囲気だった。凄く短い会話を何度もしていると、飼い主のおばさんと散歩に来た犬が美姫のところに寄ってきてじゃれてる。微妙な雰囲気から一瞬解放される。でもまたすぐに行ってしまう。
また少し二人で園内を眺めていると、美姫がレモンティーの缶を差し出した。
『美味しいよ?』
おお とか言いながら受け取って、飲んでみてってことだろうから、
「いいの?」
と聞くと、少し笑いながら
『いいよ。』
俺はできる限り軽く口をつけて一口飲む。
「うん、美味しい。」
缶を返す。受けとりながら美姫が言う。
『コーヒー好きなんだぁ。』
「うん。落ち着くし。美姫は飲まないの?」
『あんまりね。嫌いってわけじゃないけど、学校の職員室とかっていつもコーヒー臭くて。ん~なんていうか、おじさんっぽい気がして。』
「そっかぁ…」
また2人は沈黙し、俺は夕焼けに目を細めていると、美姫が思い出した様に言った。
『ねぇ、はぁってしてみて。』
「え?」
『息。』
まだコーヒーの臭いの話を引きずってるのか。他に新しく盛り上がる話題を提供できない自分に情けなさを感じつつ、美姫に軽く息を吐く。口が乾かないようにじっくりコーヒーを飲んでいたものの、やはり口臭を気にせずにはいられない。
『もう一回、』
おいおいやめてくれ!こうしている間にもどんどん乾きが押し寄せてくる。そんなことを考えていると美姫は笑いながら、
『ちょっと間抜けで可愛いね。』
「なんだよ!」
僕も照れ笑いをしながら言い返す。変な不安が吹き飛ぶと、俺は美姫の顔があまりに近寄ってきているのに驚いた。次の瞬間、正直俺はドラマの様なキスシーンを想像してしまった。でも実際はいきなりそんな大胆にはなれない。でも離れたくない。