うちのすぐ近所で幼なじみの育美とは、小学・中学・高校と同じ学校に通いました。小さい頃の育美は私から見ると、そんなに美人には見えませんでした。なにしろ小学校低学年の頃は学校の宿題をいっしょにやる仲でしたから、その頃は育美を異性として意識する事があろうはずもありません。宿題のほかにも近所の小学生たちといっしょに遊んでいました。
三年生位までそのような生活でしたが、高学年になった頃下校時にいっしょに帰ろうとすると、ほかの同級生から「誰かさんと誰かさんはアチチだ」と言ってはやし立てられました。その後、小学校を卒業するまで事あるごとに散々冷やかされました。育美が泣き出したこともあります。まったくひどいものでした。そんなことがあってお互いに意識的に避けるようになってしまいました。
中学校入学時、育美とは別のクラスになりました。私の不安は同じ小学校出身の同級生が私と育美のことを言いふらさないか、その事が気がかりでした。もし、言いふらせばまた三年間いやな思いをしなければなりません。もちろん二人とも会っても口を聞かないような暗黙の了解のようなものがありました。しかし、それも杞憂に終わりました。どうしたことか彼女と別の同級生に噂が立ちました。その時初めて「育美はモテるんだな」と思いました。嫉妬のようなものはまったくありませんでした。「育美も大変だな」と思いました。
高校生になると、勉強も難しくなるしいろいろ将来への悩みも出てきて、その悩みをうち明ける彼女がほしくなります。ある時、廊下で育美とすれ違い、その時私は育美に話し掛けそうになりました。しかし、ウッと口ごもってしまいました。小学校のいやな思い出が反射的に抑制させてしまったのでした。
しかし、もう高校生です。彼女がいてもおかしくない年頃です。
ある時、私は意を決して育美に話し掛けました。
「勉強、ついて行けそうな感じする?」
と、口から出た問いかけの言葉が良かったのかすぐ返事が返ってきた。
「大変だわ、教科も多いし量もすごいわ。」
進学校の大変さを彼女も感じている様子だった。
「そうだよね、僕は世界史なんか選ばなきゃよかったと思うよ。」
「わたし、数学。数学は苦手だわ。」
「育美、数学苦手だったっけ。」
と、言って小学高学年から以後の彼女のことを知るわけがなかったことに気づいた。
「うん」
と育美は言って伏し目がちに私を見た。その目は私に教えてくれとうったえていた。私の中学の頃の数学の成績を知っていたらしい。
私はすぐ言葉が出ず、しばらくして
「そうか」
と言った瞬間、
「亮くん、教えて。」
という育美の言葉と重なった。二人ともどぎまぎしたが、一瞬早く
「うん」
と先に言葉を発することができた。
「教えてくれるのね、亮くん。数学得意だったもんね、よかった。」
育美はうれしそうに言った。
「このままじゃ、落ちこぼれそうだったの。」
そのことがあってから、二人は学校の図書館や市営の図書館でいっしょに勉強した。
「カエサル・・? なんでシーザーが猿になるんだ。ばかばかしい」
「コサイン、コセカント? コセカントってなに。」
「三角関数やってんの。三角関係の方が面白そうだな。」
「なに言ってんの。教えてよ、亮くん。」
二人は幼いころのように無邪気に勉強した。周りにもカップルで勉強しているやつらがいた。幼なじみだったから、お互い彼氏彼女のイメージはなかったが、相手がいることは優越感だった。そんなことで勉強にも意欲がわいて二人とも志望校の大学に入学できた。
大学時代私はアパートを借りていた。育美とは大学までもいっしょとはいかなかったが、彼女の通う女子大も同じ地元の市にあった。大学生活は高校の時のように勉強勉強でなくてゆとりがあった。育美は両親の家から学校に通っていた。女の一人暮らしは物騒だしそのために育美の両親が地元の女子大を受けるように進めたのだ。
育美は私のアパートによく遊びに来た。女子大で今話題になっていることなどをぺちゃくちゃよく話した。うんざりしないでもなかった。女だけが集まればこうなるのかなって思ったりもしたが、女子大の情報源にはなった。それと、育美が来た時は食事も作ってもらえるので付き合って聞き役に回った。私の大学にも女子学生はもちろんいるわけだが、育美には気を使わないぶん楽だった。
しかし女子大生はもう大人である。最近ネアカになって大胆な所も増えてきた。ある日、育美の母親から夜電話が来た。
「育美、来てませんか。」
「いや、今日は来てませんが。」
時計を見ると、11時である。
「あなたの所へはよく行くって言ってたから、てっきり。」
「いや、うちへ来た時は10時位には帰れって言いますよ。」
私はちょっと声をあらげて言った。
「いやいや、あなたの所だったらいいのよ。幼なじみじゃない。」
向こうは変な意味に取られたと思ったらしく、おだやかな声になった。
そう言われるのもな~と私は思ったが、
「大学の友だちの所じゃないですか。」
「そうかしら。」
だいぶ心配らしい。当たり前だ。
「携帯へは電話されなかったんですか。」
「かけたんだけど、繋がらないのよ。」
わざと出ないのかもと思ったが、母親に「電波が届いてますか。」と聞くのも野暮だし、
「僕がかけてみますよ。」
育美の携帯へ電話してみた。呼び出し音がする。一分くらい待ってみた。出ない。あと一分。やっと出た。
「亮くん? なんのよう。」
音楽と歌っている女の子の声がする。カラオケボックスだとすぐ思った。
「お母さん、心配してるよ。早く電話しろよ。」
腹が立ったが、安心もした。彼女の母親も安心するだろう。
またこういう大胆さにも驚いた。ある日私が夕食を作ろうとしていた時、ドアが開いて彼女がなんとバレーボールのユニフォーム姿で入って来たのである。
「同好会があるから今日は寄らないね。」
「何作ってんの。」
と聞いた。僕がびっくりしていると
「あーあー、私が作るわ。」
だらしなく言い、10分位でチャーハンを作って
「またね。」
と言って帰っていった。
「何しに来たんだ。」
という気持ちだったが、きっとユニフォームを見せびらかしに来たんだろうと思った。しかし高校時代までのどこかで見ただろう幼なじみのブルマ姿を大学になって間近で見る事になるとは思わなかった。
エッチな気分にもなったが、私に対して警戒感なしと言うのも男として腹が立った。ブルマを見て男が感じないとでも思っているのだろうか。バレーのユニフォームの上だけ見れば普段の洋服よりカッコいいと思ったが、これにブルマが付くと妙にエッチな気分に男はなるものなんです。
数日後、育美はいつものように普段着で現れた。食事をしてテレビをいっしょに見ている時、私は育美にいった。
「育美、俺びっくりしたぜ。おまえこの前バレーのユニフォームのまま、来ただろう。」
「うん、なぜ。」
「なぜって、あんまり男ひとりの所へああいうユニフォーム姿で来るなよ。」
「なぜよ。」
と育美は笑っている。
「いや、男ひとりの家へあんなかっこうで行かないほうがいいぞって言ってるんだ」
「な~んか、感じたの~?」
変にイントネーションを付けてわざとらしく言う。
「バカ言え。ただ忠告してるんだよ。」
「ふ~ん。わかった。亮くんの忠告、聞いとくわ。」
その後、話題は変わった。
次の次の週の土曜日、育美から、「今日行くから家にいてね。」と電話があった。「何時頃。」と聞くと、
「11時頃だと思う。」と言う。「お母さん、心配するだろ。」と聞くと「大丈夫。ちゃんと言ってあるから。」と答えたので、「勝手にしろ。じゃあ、おれもその頃まで友だちと飲みに行ってるから。」と返事した。
友人三人と飲みだいぶ酔いが回っていたが、アパートに向かってとぼとぼ一人で歩くと急に酔いが冷めてきたような気分になる。アパートに帰ると育美はもう来ていた。
「時間通りに帰ってきたぜー。」
大きな声で言った。まだ、アルコールはだいぶ残っているらしい。
「お帰り。ご機嫌ね。」
「育美が来なきゃ、まだ飲んでいたよ。」
「あら、ごめんなさいね。」
「でも、今日はずいぶん遅いじゃない。」
私はマジに聞いた。
「バレーボールのサークルの帰りなの。」
「ふーん。」
興味ないって感じの返事をした。
「飲み足りないなら、ビール飲もうか。」
「うん。そうだな。」
育美が冷蔵庫から缶ビールを持ってきた。二人で缶を開ける。
「スポーツの後のビールは最高だわ。」
「スポーツしなくてもビールってもんは美味いのさ。」
二人でもう一缶空けた。だいぶまた酔いが回ってきた。
唐突に育美がしゃべりだした。
「この間、亮くん。私のユニフォームがなんとかって言ってわね。」
「ああー、何のこと。」
酔いで意味が理解できてない。
「私がブルマーはいてきたときの事よ。」
「ブルマー!!」
ドキンとした。
「ブルマーがどうしたのさ。」
少しとぼけて言った。
「亮くん、感じたんでしょう。私のブルマー見て。」
育美は大胆に言った。私はグサリとナイフで突かれたような気分になった。
「・・・・なん・・なんでだよ。」
「・・・・・それじゃ、私のユニフォーム姿見ても感じないのね。試してみようか。」
「・・・・。」
育美は持って来てあったスポーツバッグを持って、隣の部屋に入っていった。
「逃げないでね。・・・・亮くん、女の子はね。男の子がブルマーに視線をちらちら向けているのに気付いているのよ。・・・そして男の子はさあ、あそこがモッコリしてくるんでしょ。」
育美のあまりの大胆さに私は声を発することができなかった。
育美がユニフォーム姿で出てきた。この前と同じだ。もちろんブルマーも。
「さあ。こっちへ来て。」
カーペットの上に私を招いて座らせた。私は圧倒され、言うがままに動いた。彼女は私の前に立った。胸が高鳴った。目の前にブルマーがある。
「このままでいいかしら。私も座った方がいいかしら。さあ、亮くんが私を女として見てくれるか、勝負よ。」
私は心臓の鼓動は育美に届くくらいに高まった。
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ。
「亮くん、私を女として見てくれてないものね。単なる幼なじみじゃないわ、これからは。」
そういうと、育美は両手で私の頭をつかみ、顔をブルマーに押し付けた。私は限界だった。ナイロンの柔らかさと汗の匂いを嗅いだ時私は野獣に変身していた。私は両手を育美の尻に回し、顔をブルマーに付けたまま抱きついた。
「ああー、いくみー。いくみー。」
本能のまま叫んだ。
「亮くーん。」
育美も。
「いくみー。好きだよ。」
「亮くーん、ありがとう。うれしい。」
育美は涙声になった。
「亮くん、私、小さい頃からずっと好きだったの。」
「おれも。俺、今やっと気付いたよ。」
「ほんと!!ほんとなのね。うれしい。わたし・・、わたしをあげられるのは亮くんだけだわ。亮くん、亮くん。上、上に来てキスして。抱きしめて。」
私は両手をゆるめて立ち上がり、育美の唇に自分の唇を押しつけた。
熱い吐息の後、今度はユニフォームの胸に顔を押しつけて両手で抱きしめた。育美の汗の匂いと胸の膨らみを感じ、もう訳が解らなくなっていた。育美を抱っこしてベッドへ運んだような・・・。
その後よく覚えていない。
次の朝、ベッドの上に二人寝ていた。腰が重たい。