事の始まりは引っ越したことにあります。
小学生で両親が離婚、母に引き取られて引っ越し、近所にあいさつ回り。
角部屋が独身女性だったので母は一応の安堵感があったようですが、隣に住む身の僕は当初あまり好きではありませんでした。
表向きは常識的な対応を一応は見せるものの、どこか面倒くさそうで。
パートで働き出した母は時給の高い夜間へと変わったことで、独りの時間が増えました。
晩御飯は母の作り置き。それが当たり前の日常なので何も感じませんでしたね。
ある日の晩御飯がカップ、こんな日もちょくちょくありまして、熱湯を溢して火傷をやらかすんですね。
痛くて不安で泣き止まない声に様子を見に来たのがあの隣人さん。
事態を飲み込むと冷凍庫の氷を探してくれましたけど、如何せん無い。
手を引かれて行った隣人さん宅。一生懸命に冷やしてくれたおかげで大事には至らずに済みました。
これが切っ掛けといえば切っ掛けになります。
近所とあまり繋がりを持ちたがらないというか、子供が好きじゃなかったのかは知りません。
それからは隣人さんが休みの日にはたまに部屋に呼ばれて、晩御飯を一緒に食べる事がありました。
話をするようになって、子供の接し方が苦手だっただけで優しい女性なことは分かりました。
学校には同年代の女教師がいるにはいましたけど、雰囲気はまるで違って距離感が近い。
大人に対する接し方にしては砕けていて、子供に対する接し方にしては下手、苦手なだけで優しいんです。
思春期を迎えた小学生の高学年になると、この女性の部屋に行くことが別の意味で楽しみになっていました。
今思えばおそらく母とはひと回り近く年下であろうこの女性の匂いに、恥ずかしいのですが惹かれるようになっていました。
部屋着でいる女性のお尻に浮かぶショーツの形や、ブラジャーストラップが見え隠れするだけで興奮を覚えるようにもなります。
自宅にいる時くらいは楽な服装でいたいでしょうけどね……。
中学生になるとさすがに恥ずかしくはなりましたが、相変わらずこの女性の部屋通いの習慣はなくならず、何なら宿題をしてみたり真面目な男の子を演じてみたり。
そのくせトイレを借りてはサニタリーボックスを覗いてみたり、洗濯機の中の未洗濯の下着をこっそり手にとって匂いを嗅ぐ、みたいなことをするようになるんですね。
そりゃあ胸元の奥が見えたり無配慮にショーツが見えたりする姿勢をされたりだから、欲望は募るでしょ?
高校生になる前に、もうお隣さんの部屋に上がり込むことはしていない事になってはいました。実際には母に内緒で通ってましたけどね。
そんな中、女性の様子に変化が出てきたことに気づきました。
思い詰めたようなことがあったり、かと思えば妙に明るかったり。
ある程度の親しさはあっても大人の世界には踏み込めず、心配になりながらただそこに居ることしかできません、ガキには。
想像するしかありませんが、この女性にも恋人と言える人がいて、その関係が終わった時期だったのかなぁと……今思えば。
誰かに頼りたかったのでしょうか、なんの脈略もなくいきなり抱きしめられていました。
普通であればどこかで我に返り、距離を置くような行動をするのだと思います。
ところが違ったわけです。
長くなりましたので、続きを分けて書こうと思います。