高校生の時に初めて彼女ができた。ボブヘアーで読書が好きで、明るくて博愛でみんなに優しい。目がぱっちりしていてアイドルみたいだった。
そんな彼女とはお互いに初めてだった。最初は上手くいかず、何度か繰り返してやっとひとつになれた。達成感と嬉しさと同時に、いっぱいいっぱいになった彼女が可愛くて可愛くて仕方なかったのを覚えている。
一度成功してからは何度も身体を重ねた。彼女とのセックスは信じられないほど気持ちよかったし、彼女を気持ちよくしたいという気持ちで溢れていた。当時は分からなかったが、愛し愛されてするセックスほど気持ちいいものはない。適当な相手と性欲を吐き出すだけのセックスとは比べものにならなかった。今でもそう思う。
彼女は頭が良かったので学力に見合った都会の大学へ進学。自分は地元の大学に行き、遠恋を続けていたが今ほど連絡が取りやすい環境ではなかったのもあって自然消滅してしまった。
その後、何人かの女の子と付き合ってセックスしたが彼女とするセックス以上の気持ちよさを感じたことはなかった。
25歳になり同窓会で再会した。付き合っていたことはすっかり過去となり、自然に再会して自然に会話できた。お酒も入っていたがほろ酔い程度で理性は残っていたと思う。
が、気がついたら彼女とホテルにいた。どっちから誘ったかは覚えていない。言葉少なに抱き合って、キスして、シャワーも浴びないまま繋がった。数年ぶりの彼女の身体は相変わらず気持ちよくて、挿れただけでいきそうだった。必死に我慢して、夢中で腰を振って、人生で初めて中出しした。
その後、目が覚めて酔いもさめてお互いに「お酒の勢いって怖いね」と苦笑しながら別れた。自分は勢いだけじゃなかったと言いたかったが、言えなかった。
アラサーになって職場の同僚と付き合い結婚した。思えば嫁による計画的なデキ婚だったと思う。ときめきはないが子どもができた責任と、年齢的なこともあってそのまま結婚することにした。彼女のことは頭の片隅にあったけれど、あの夜言えなかった時点でもう縁がなかったのだと思うことにした。
嫁は性欲が強く、子どもが生まれてからも積極的に求めてくる。嫁の事は好きだし夫としての義務を果たすべく抱くけれども、彼女とのセックスほど気持ち良くはなれない。ゴムを着けようが着けまいが、中に出そうが出すまいが関係ない。どれだけ工夫を凝らしても、彼女とのシンプルなセックスに勝てない。もしかしたら彼女はいわゆる名器というものだったのかもしれない。
そう思うと、彼女に群がる男たちに嫉妬した。25の時に再会した時も彼女は相変わらず可愛くて、男が放っておかないルックスを維持していた。あれでは彼氏を選ぶのも困らないだろう。選んだ彼氏と何度身体を重ねただろう。その彼氏もきっと彼女の身体に溺れたのだろうな…なんて虚しい想像ばかりが駆け巡る。
結婚には後悔はしていないけれど、あの夜もし自分が勇気を出していたら。彼女に「よりを戻したい」と言えていたら、なんならプロポーズしたって良かったのに。これまた虚しい妄想が今でも止まらない。多分、一生彼女のことが好きだ。きっとずっと忘れられない。嫁と離婚して彼女と一緒になりたいわけではないが、最高の相性とほろ苦い思い出として心の奥底に鎮座し続けると思う。