・・・それから4~5日たって彼女は携帯電話を手に入れました。最初の電話を使って掛けて来たのは私の
携帯電話へでした。何となく予感はしてましたが。
・・・ここまでお読み頂いている読者様には、何の変哲もないつまらない話と思われている事と思います。ひよっとしたらあまりのつまらなさに
途中で読むのを辞めてしまった方もいるかもしれません。申し訳ございません。。。
さて、携帯電話を手にした彼女。それから毎日ポケベル方式の入力でメッセージが届きました。私はしばらく返信する事が出来ませんでしたが・・・
しかし、連絡手段が手に入ると急速に進行するのが「男女の仲」です。あれよあれよという間に一週間が経ち、私たちは仕事終わりに待ち合わせをする連絡を
携帯電話で取り合う様になっていたのです。さすがに毎日と言う訳ではありませんでしたが、週に二回だったのが週三回になり、やがて二日連続になったり。もちろん待ち合わせをしたから
と言って、エロい雰囲気になる事も無く(私がセーブしてた!)いつも30分~1時間位、ジュースを飲みながら話をしていたのでした。
・・・そんなことが2週間くらい続いたある日(土曜日)の夜、また彼女と待ち合わせして駐車場で会い、私の車に乗り込んで来ました。そしていつもの様に「はい!」とジュースを渡すと
「あの・・・今日はまた友達の家に遊びに行くから帰りは遅くなると言って来た」と彼女。もうその頃には驚く事も無くなってきていた私でしたので「あ~そうかい!」と軽く答えました。「で、遅くなるまでどうしよう?」
と彼女に問うと「車でどこかに行きましょう」との即答。それならば!と彼女を乗せ、薄暗くなってきた道を走り始めました。行く先は夜の湖です。かつて恋愛関係にあった女性たちとは「必ず」と言えるほど何度も行っている
湖です。みんな必ず訪れる湖です。きっとこの時の彼女(千鶴さん)もこの時を心待ちにしていたのでしょう。最近のいつもより口数が少なく、頻繁に飲み物を口にし助手席の窓から外ばかり見ていました。私は「覚悟と緊張だな・・・」
と察しましたが、あえて彼女には男女の話はせずにいました。
やがて湖に到着し、駐車場に車を停め「ちょっと下りて歩いて来よう」と彼女を外へ連れ出し、真っ暗で誰もいない湖のほとりや桟橋を並んで歩きました。砂の上で私がちょっとふらつき彼女側に寄った時、私の手が彼女の手に初めて触れました。
「あ!ごめん」と私。「大丈夫?」と彼女。「ちょっとよろけた~」と言う私。「暗くて足元よく見えないからこわいね」と直ぐに答える彼女。この時なぜかドキドキしている自分に気がつきました。落ち着こうと思いながら歩き続けるも、また私がよろけて彼女
の手に触れてしまいました。「わっ!」と声をだしてよろけた私にすかさず「危ないから手繋いであげる」と彼女。その声は緊張で上ずっていて、私にもその緊張が分かったものでした。そしてサッ!と私の左手を握ってきた彼女。やはり緊張していたのでしょう。私の手を
握る彼女の手の力が強かったのを覚えています。そして彼女自身の方へ僅かに引っぱられているのもわかりました。私もドキドキで何を話したのかも覚えていませんでした。そのあとボート乗り場の桟橋を並んで歩きました。暗く狭いので彼女は手を繋いだままピッタリと私に
くっついて並んで歩きました。その時に私の左腕に彼女の胸が当たっていて「嫌がらないかな?」と心配もしました。が彼女は知ってか知らなくてか、ずっとそのままの状態で桟橋を歩き続けました。風も無く天気の良い夜で、いつもだと多くのカップルがいるこの場所には私と彼女
だけがいました。
やがて桟橋の先端に着き「夜の湖もいいもんでしょ?」と彼女に聞くと「友達が言ってる意味がわかりました」と彼女。友達の多くがカップルになった時にこの場所を訪れるという事だけは知っていた彼女。今こうして初めて男性と手を繋ぎ、この場所にいる事に気持ちが昂り、興奮している
のが分かりました。彼女と繋いでいる手をちょっとだけ強く握ってみました。彼女の反応が見たくて・・・
二呼吸ほど間をおいて彼女の手は私の手を握り返してきました。暗くてはっきりとは見えませんでしたが、彼女は遠くを見つめていた様に見えました。しばらく無言の二人でした。ただ手だけはしっかり握っていました。
私にはその時の彼女の気持ちがはっきり伝わってきました。
彼女が意を決した瞬間でした。
続く・・・