元々は、工場だった跡地に建てられた校舎で、俺たちが移ってきた時はまだ、その名残の建物がいくつもあって。
高校自体も地方の私立で、所謂、悪の掃き溜めだった。
俺が3年の時だった。
誰も使って居ない、以前の工場の取り壊されてない建物が俺たちの喫煙室。
その途中にも幾つか小さな倉庫だったような建物がある。
その1つの前を通る時に、中から声がした。
「ちょ!やだ!止めて!離して!」
女の子の声だった。
なんかヤバそうだな。
そう思ってその建物のドアを外す(壊れていて開ける閉めるの感覚では無い)
中には2年の使いっ走りに毛が生えたようなシャバ僧達3人が女の子を押さえ込んで、今にもレイプするゾみたいに見えた。
「よぉー、おめぇら、2年だろ?何やってんだ?おら!」ちょっと脅す。
「っ!!たくみ先輩!」
「よぉ!って、挨拶なんてどうーでもいいや。なにしてるか、きいてんだけどよ、こたえろや」
「や、あ、あの、ちょっと、やりてぇーなぁーとか、思って、て」
「で、レイプってか?」
すると2年坊は黙り始める。
「おめぇら!後で教室いくからよ、逃げんなよ?」
ボンタンのファスナーも上げずに慌てて2年坊達が走って出ていく。
女の子が「先輩、ありがとうございました」
頭を下げる。
「間に合って良かったな、アイツらは任せとけ、もう手、だせねーようにしとくからよ」
昼休み、2年坊達に恐怖のお時間です
あ?謹慎?上等!
アイツらは2組と3組、両方、キッチリ〆とかねーとな。
「おいっ!やべー!たくみが2年の教室で暴れてるって!」
忽ち3年のフロアで騒ぎになる。
止めに来たのか?
加勢に来たのか?
よくわからねーやつが割って入る。
「うっせー!とめんなや!」
振り払うつもりが、肘鉄になって、止めに来た奴に入る。
2年の小僧を蹴飛ばす。左の誰だかわからねー奴の髪の毛を掴んで机に叩きつける。
目の前机を蹴飛ばし、覚えのある顔の奴の顔を上から勢い付けて踏みつける。
「オラぁ!てめぇだよ!おら!その、クソみてぇーな面!」
「退けやっ!クソじゃまだろよっ!」
気が付くと、仲間と先公に取り押さえられ身動きが取れなくなっていた。
職員室で、校長、教頭、担任、副担。
「なんで、こうなった?たくみ?」
「・・・・」
「黙ってたら、警察に引き渡すしかなくなるんだ!何とか言え!たくみ!」
「・・・さぁね、ムカついただけなんじゃね?」
「何を他人事みたいに!お前だぞっ!お前のした事を言ってるんだ!」
昼間の女子の事を話さなくちゃいけなくなる。
それはどうしても避けたかった。
が、2年のクソ坊主だきゃ、やらないと収まらなかった。
まぁ、そんなとこよ。
口にだせば簡単だけどな。
さて、どうしたもんかと俺も一応、悩む。
ガラッ!
「たくみ先輩!先生!」
ハッと音のしたドアを見る。
昼間、2年共に襲われかけてた女子だった。
「先輩!」
そう言いながら、俺たちの前に走ってくると
「先生!違うんです!お話しますから、聞いてください!」
そして、その女子は大人達を相手に説明し始めた。
俺が止めようとすると
「いいんです!襲われた訳じゃないんですし、でも、先輩、ありがとうございます!」と
頭の硬そうなクソ親父ども相手に説明を続けた。
女子が話終わると、クソ親父共は
「だかな、たくみ、お前のした事はただの暴力だ。なぜ、先に先生達に言わなかった?」
はぁあ!?!?
「ふざけんなよ!こらっ!てめぇらみてぇーな頭で先に考える奴らに頼ってたら、この子がどうなってたか、てめぇらの硬い頭でも想像つくだろっ!ま・に・あ・わ・ねぇっつってんだろがぁ!」
「その事を言ってるんじゃない。暴力だ、暴力の事を言ってるんだ!」
「まだ、分かんねぇのか?クソジジイ!そんな頭だから、間に合ってねぇーっつってんだよ!てめぇらの頭じゃ、被害の2人や3人でも出なきゃ、対処出来ねぇっつってんだよ!」
流石にこれは大人達も黙ってしまった。
「よく聞けやっ!おっさんよぉ。おめぇらも知ってんだろ?ここ、どこかってよ?そんな綺麗事じゃ収まんねぇ事もあるんだってよ。警察でもなんでも引き渡したきゃ引きわたしゃいいだろ!」
吐き捨てた。
俺に両親は居ない。
姉が1人いて、姉と二人暮しだった。
教頭が呼んだらしい姉が職員室に現れると大人達から説明を受ける。
姉は23だが、同年代の女達より色々と経験している。
「で、家のたくみが一方的に悪い?と。そう言いたいんですね?たくみ、帰るよ。相手にしなくていい。こんな大人、大人じゃないから。さっ、帰ろっ?」と俺と襲われ掛けた女子の手を掴むとグイッと引っ張った。
「お、お姉さん、ちょっとお待ちください!この件は、きちんと話し合わないと!」
すると姉は、大人達に振り向き
「話し合い?誰と?まさか、あんたらじゃないですよ?笑えるんですけどーアッハッハッハッハッ!あー帰ろ帰ろ」
姉の車に例の女子と乗る
「ねぇ?君(例の女子)送ってくから、どの辺か教えてね」と車を走らせた。
「たくみ?今日は何人やった?」
姉がバックミラー越しに聞いてくる。
「ああ?わかんねー笑」
すると後ろの席で小さくなってた女子がボソッと
「7人だって・・・」
すると姉は口を緩めて「たくみ、やるじゃん♪」
ちょっと間を開けて、姉が
「でもさ、たくみ?良く聞いて。謹慎はいい。年少はやめときな?先にいい事ないからさ。一応、明日、ガッコ言ってわからず屋連中に頭下げな。その代わり、あんたの味方はあたしがするから。」
カッケー姉ちゃんだぜ、まったくよー。
「き、昨日はすんませんでした。」
校長と教頭に頭を下げた。
すると生活指導の先公が
「教頭?2年の連中も大した事ないんでしょ?たくみもこうして謝りに来てるんだし、いいんじゃないです?」
「そもそも、校内で女子生徒を襲いかかるって、頭がどうかしてるのは2年の連中な訳だし、その事を賞賛もせずにただ、暴力だからって、そういうのは大人のする事ですかねぇ」
ふと生活指導の先公が俺を向き
「謹慎は覚悟だな笑」
と肩を叩き、出ていった。
1ヶ月の登校謹慎。
担任か副担の前でひたすら反省文やら、ノートの書き写しやら、学校に来て、1番書き物したわ笑
でも、いい事もあった。
襲われ掛けた女子、藤田みのり2年4組。
「先輩!今日は早いですね?一緒に帰りましょ?」
あれから、行為を寄せてくれてるみてぇ笑
よく見れば、擦れてなくて可愛いじゃん。
事件以前、ちょくちょく俺の名前は2年連中の間でも名前は出る程度だったらしいが、実際にやり合う所を見たことがないのばっかりだったらしく、噂がひとり走りな感じだったけど、今回の事で、2年はビビりまくってるとみのりが話してくれた。が、ぶっちゃけ、誰が強いとか、興味なかった。
で、3年の中でも族の連中とかから誘いがあったり、OBの組に出入りしてる先輩なんかがやたらと顔を出すようになってきたが、こっちも興味が無かった。
幸い、地方なんで、族っていっても、いくつもあって抗争してるとかじゃないから、別に断っても利害がないから平気だった。
ただ、組に出入りしてるOBはめんどくさかった笑
みのりと初デートの日。
普通に街に出て、ちょっといい飯を食って、服を選んだりして、俺ん家に呼んだ。
姉は夜仕事なんで、ちょっとみのりが挨拶したら、直ぐに出かけた。
ぶっちゃけ、童貞じゃねーけど笑
女子に弱いかしんねー笑
キスからみのりのペースだった。
大人しい感じのみのりが、急に年上に見えた。
みのりも初めてじゃないっぽくて、俺よりは、ソレを知ってる感じだった。
「なぁ?みのり?ホントに俺でいいんかよ?また、暴力起こすかしんねーよ?」
みのりは、「うん、でもなるべく蹴ったり殴ったりしなくてもいい方向も考えてくれたら嬉しい」
難しいな笑
「ああ、わかった努力するわ」
以来、謹慎も明け、夏休み。
俺もみのりも夏休みの前半はバイトに明け暮れ、後半は、長野の軽井沢にいく。
バイト→俺ん家でハメ
たまに姉ちゃんがいる時は3人で飯食ったり、映画見たりした。
軽井沢前日、ねぇちゃんが
「あんたら、どうせあたしがいない時ヤリまくってんでしょ?わざわざ軽井沢行ってやりまくる必要ある?」
変な事を言い出す
「いいだろ、行きてぇーっていってんだから」
「あ、みのりちゃんが行きたがってんだぁ」
「そーだよっ!俺が行きたかるかよっ笑」
そりゃそーだわと姉ちゃんは笑ってた。
そうそう、俺が〆た2年のクソ坊主共。
俺より長い謹慎明けて、俺とみのりに頭下げてきた。
退学させられたらしいけどな笑
俺は、クラスでも仲間も増えたし、2年にも何故か人気出た笑
先公共は、要注意生徒に指定してるらしいが、関係ねぇ笑
でもさ?あれじゃね?
みのりの事、俺の悪い頭で考えると。
高校中退とかさ、やばくね?笑
みのりは、進学校の公立を受けて落ちて、滑り止めで受けてたこの高校に来たわけよ。
俺と出来が違うんだわ笑
ちゃんとした高校いってりゃ、それなりの青春だった訳よ。
経緯っていやぁ、経緯かもしんねーけど、こうしておれの横を選んだ。
そうわかってから、なるべく真面目に高校に行こうと思ったし、喧嘩もそうそうやってらんねーわと思ったわけ。
冬休み前。
生活指導がクラスに来て
「たくみ、ちょっと話がある。後で研究室に来い」
行ってみると、姉ちゃんもいて、何事よ?
「たくみ、あのなぁ。最近、真面目だな?彼女のお陰か?」
姉ちゃんは、生活指導の隣で笑ってる。
「まぁな、みのり、元は俺と釣り合いなんてとれねー高嶺の花だかんな」
「あんまり、迷惑はかけたくないと?」
生活指導が続ける。
「迷惑ってよりは、危険に晒したくねーって言うことよ」
姉ちゃんが横から「ふーーん」
で、でよ?
なんで生活指導と姉ちゃんが仲良さそうに並んですわってんの?
「あぁ、元彼だし」
は、はぁあ!!!?
なんだそれ!
「ま、とにかくだ。たくみも落ち着いて来たってことかな?ね?ゆりちゃん(姉:百合)」
姉ちゃんが立ち上がり、俺の肩に手を置いて
「ねぇ、たくみ。あたしさ、結婚してもいいと思う?」クスッと笑う。
えっ!?誰と??
間の抜けた顔してたんじゃね?俺
「はぁあ!?誰とよ?」
えっまさか、生活指導がおれの義兄!?!?
「えっ!まさか、生活指導!」
そのまさか、らしい
「てめぇ!俺の姉ちゃんにいつの間に手ぇ出しやがった!オラっ!答えろ!えろジジイがよっ!」
「エロは余計だろ、たくみちゃーん」
姉ちゃんが「あっ!みのりちゃんも呼んであるから4人でご飯いくよー」
夜、帰って姉ちゃんが言うには、生活指導も昔はヤンキーだったらしく、姉ちゃんは結構頼ってた人だったらしい。
そんで、生活指導は去年の春に離婚したんだが、ソレを知った姉ちゃんからアピールしたらしい。
姉ちゃん、美人だからな笑
今でもキャバでナンバー1だし、生活指導も昔、姉ちゃんとつるんでた時は気になってらしいし、で、こうなったんだとよ。
姉ちゃんの結婚式に来たのは、俺とみのり、生活指導の両親と生活指導の弟。
レストランで飯食って、みんなで笑った。
いつか、俺はみのりと結婚するだろなー。とか、なんとなく初めて思った。