元カノの「優子」とは付き合った当初は例に違わず、彼女とのセックスは、射精だけが目的のジャンクセックスと化していた。
付き合って始めてのセックスは、ただ抱き合っているだけでも幸せと充実感を感じていたし、少なくとも彼女もそうだったと思う。
そんなジャンクセックスの日々が続く中、一回のセックスが20分にも満たない、そして自分ばかりが射精して満足するセックスで、「一体、なんでセッ○スするんだろう?」と考えるようになってきた。
セックスについて強い興味を持つようになり、ともあれ彼女に気持ちよくなって欲しい、気持ちよくさせたいという一心だった。
そんな中、ふと書店に立ち寄った時に見つけたのがスローセックスの本だった。
今までの自分の考え方を改め、あんなに愛しい彼女を性欲のはけ口にしていたことを反省した。
そして、関連の著書を何冊も読みあさった。
彼女はセックスに対してオープンではなかった。
何故か常にいけないことをしているという気持ちがぬぐえなかった。
そして、そんな悲しいセックスから脱却し、二人が幸せになれるセックスを実践する決心をした。
いつもは、自分の家で寝る前に彼女を無言で脱がしてセックスに持ち込むわけだが、今日は少し路線を変更した。
僕は彼女の顔がとても好きである。
しかし、セックスの時は顔のことなんて考えていなかった。
あんなに愛しい彼女の笑顔や表情をセックスの時に限って愛していない。
その日は、ある一言から今までの二人にとって最高のセックスへの入り口が開かれたのである。
今までのように家でお風呂に入って寝る前にセックスというわけではなく、彼女の初めての誕生日に食事したイタリアンレストラン
に誘った。
今までの楽しい思い出やケンカしたこと、そしてお互いの考えていることなんかを話しながら楽しく食事をし、ラブラブになった頃
に、彼女をホテルに誘った。
「今日は気分を変えて外でお泊りでもしよっか?」
「えっ。久しぶりだね~。」
「うん、なんか優子のこと思いっきり抱きたくなって。」
「ふ~ん。そうなん?よしよししてくれる?」
「うん!よしよししてあげるよ。」
こんなやりとりをしながら今日は特別に予約しておいたシティホテルに向かった。
二人でさっきのレストランで買っておいた白ワインを冷やしておいてお風呂に入る。
お互いの体を洗いっこしあいながら、キスをし、抱き合い、ふざけあい、しかし、いつものような乳首や陰部を触ることはしない。
もちろん、自分のペニスにも触らせない。
ただ、ふたりの時間を楽しむこと、相手をいとおしく思うことに集中する。
「たのしいね。」
「うん。楽しいし、嬉しい。」
「嬉しいの?」
「うん。いちゃいちゃできて嬉しい。」
そんな彼女の表情や言葉に触れ、自分も喜びを感じていた。
湯船にふたりでつかりながら、彼女をひざの上にのせ何度もキスをする。
キスを重ねる度に彼女をいとおしく感じていく。
そして、いつものような射精することだけの欲望をその日は感じなかった。
お風呂をあがり火照りきった体で、キンキンに冷えた白ワインを飲む。
乾杯の後、ふたりは久しぶりの新鮮な空間にも酔いながら会話を楽しみ、
そして、ふたりの距離も近づいていく。
楽しい会話をしながら、でも会話に引きづられることなくふたりはお互いを意識しあっている。
彼女の体が艶やかに美しい。
目、唇、首、うなじ、胸、ふともも、手、足の付け根まで全てがいとおしい。
お互いの意識が最大限に高まってきた頃、自然とキスが始まる。唇がいつもより敏感で、キスしているだけでとろけてしまいそうな快感が体中を走る。
やさしくゆっくりと彼女の下唇を自分の唇ではさみ、舌でなぞり、彼女の唇が自分の唇を包みこみ、舌と舌が絡み合い、お互いに唇をぶつけ合うようにキスをする。
彼女はいつもと感じが全く違う。いつものセックスであれば乳首を愛撫するまで感じている素振りはない。
でも今日はキスだけで全身に鳥肌を立てて、あまーい吐息を漏らしている。
乳首も触ってもいないのに硬く勃起している。
しかし、彼女の乳首や陰部に触れることは無い。ここで刺激の強い愛撫を
行なえば、いつものセックスと全く変わらない。
今日のセックスは高級レストランのフルコースである。前菜から始まり少し
づつ味覚を刺激する料理へと移行していかないと味覚オンチになるからだ。
乳首を触ることは、いきなりメインディッシュにマヨネーズをドバドバとかけるような好意である。性的快感に鈍感になり、愛情も幸福感もない。
じらしてじらして、彼女の性感脳を開放することが目的なのである。
ゆっくりと彼女の体を寝かせる。決して野蛮に押し倒すようなことをしてはいけない。彼女がびっくりしないようにエスコートするのも男の役目である。
仰向けになった彼女は白ワインで少し酔ったのか、少し紅潮した顔で、自分のほうをじっと見つめている。
その表情がまたたまらなくいとおしく感じ、なんどもキスをする。
キスだけでもう30分以上時間が経ったかもしれない。
そして、徐々に首筋、わき腹、手、鎖骨などを優しくキスしていく。
射精だけ考えているようなセックスでは気付かないような小さな反応も今日は
見逃さない。
「あっ・・・。」
キスをする度に声が漏れる。
しかし、あくまでキスは愛情を表現する為の手段である。繊細な性感帯を開発していく為には、やはり指で微妙なタッチ圧を安定して供給する必要がある。
普段はこしょばいものでしかない刺激でも、愛情を持ってキスを重ねることで性感脳が肌の感覚とつながっていく。
まずは、髪の毛をゆっくりと触れるか触れないかの感覚くらいでゆっくりさすっていく。。
髪の毛は毛根とつながっている。
毛根への微細な刺激を送り込むことで、その他の性感帯への刺激を受け入れやすい状態になるのだ。
ゆっくりとゆっくりと彼女の目を見つめながら、そして優しくキスをしながら髪の毛をなでていく・・・。
彼女は目を閉じて、優しく愛情のこもった刺激を味わっている。
目を閉じていても幸福感に包まれた顔から笑顔が漏れている。
彼女が愛情を十分に感じたと確信したところで、次は顔への愛撫へと移っていく。
セックス以外の時は女性の顔や表情をあんなに愛してやまないのに、
セックスになった瞬間に男は女性の顔を愛でることはほとんどない。
今日は違う。彼女の頬をゆっくりとアダムタッチで愛撫していきます。
男女ともそうであるが、好きな人や愛しいひとから顔を触られるのはとても嬉しいし、気持ちいいのです。
逆に嫌いな人や相性が悪い人から触られたら嫌なのも顔というわけです。
ゆっくりゆっくり彼女の日頃の表情を思い出しながら、愛撫していきます。
彼女も自分の顔を愛撫してもらうなど考えたこともなかったと思います。
でもこうして触ってもらうと幸せな快感を感じることができるのです。
「・・・・・ふぅぅぅ。・・・・はぁぁぁ。・・・・・・」
と細かい吐息を漏らしながら、ピクッ!ピクッ!と体が反応しています。
続く