季節は夏になっていた。403号の佐藤さんは、相変わらず1週間に1回は必ずといっていいくらい、料理のおかずを俺の部屋に届けてくる風習は続いていた。俺ももらってばかりでは悪いので、仕事の帰りとかに駅で物産展などをやっていた時など、適当に1200円くらいの和菓子や、食べ物等をお返ししたりしていた。この夏の真っ盛りになる頃には、贈り物効果と、それに合わせて世間話などもするようにもなり、どんどん親密度が増していき、佐藤さんがどういう人なのかも少しずつ知っていったのだった。聞くところによれば、出身は北海道との事だった。(物産展で、北海道の商品をあげたときにそれが判明した)高校を地元で卒業し、同時に、興味のあった大都市のインフラ整備に興味を持ち、それで将来の就職の為に資格を取得し、これからの自分の仕事をエネルギー関係や、インフラ関係の技術を取得しようと、それで俺の家から徒歩数分の場所にある専門学校に通い始めたとの事だった。俺はもともと都会生まれ、都会育ちで今まできているので、正直言えば、なにが今更、都会のインフラだ、エネルギーだと思ったが、つまり、まったく興味がなかったが、それとは逆に、意外と都会の喧騒や、人々の閉塞感に汚染されていない若者は、こうも純粋なものなのかとも思った。俺はその今時、変わった古風な雰囲気を持つ藤さんの話を職場の同僚に話したところ、まずは「お前、とうとう彼女いなさすぎて妄想が始まったかw」等ともいわれてたが、その同僚が真面目いうには、「その子、もしかしたら、(いい意味での)発達障害かもしれんな」との事だった。俺は「発達障害?それって逆にコミュニケーションとれないとか、落ち着きがないとか、そういうのじゃないんか?」というと、その系統に詳しいその同僚がいうには、「いや、男と女で症状は違うんだよ。男は確かに、お前が言うような要素もあるんだけど、女の場合は逆に、おっとり、人見知りしないとか。ただ忘れ物をよくしたり、行動の準備が遅いとかは言われるけどね」等というのである。「ふーん」とくらいしか思えなかった。そして、究極な出来事があった。俺は喫煙者なのでタバコを吸う時に洗濯ものを干す窓から顔を出して俺は吸っている。俺が扉を開けてシガレットをくわえ、ライターに火をつけようとしていると、上からもタイミングよく、「キュルルルルルル」(窓の開く音)がしたんだ。そのすぐ後に、「カチャカチャ」と、あの洗濯物のタコ足がカタカタなる音をさせて、佐藤さんが家から、 にょっ と顔を出したのだった。あまりにもタイミング良すぎて、いきなり隠れるのもどうかと思い、303号の下から、上に顔を向けて「あ、おはよ」と挨拶をした。すると佐藤さんも「あ、どうもw」みたいな感じになった。そして俺は口にタバコをクワえていたもので、「ごめんね、タバコ吸ったら煙が上にいっちゃうね。別の場所で吸うわw」と咄嗟にそんなセリフが出た。佐藤さんは「今日は風が強いから、タバコの煙は↑にあがるまえに、横に飛んで行っちゃうかもなので、そこまで被害はないと思います。大丈夫です。」と、一瞬、微笑みたくもなる返事がきたのだった。俺は「いやいや、最低限のマナーだからさw あれ、今日は学校は?」 「今日は昼からです」とか、そんな会話をしながらも、たんたんと佐藤さんは洗濯物(ブラやパンツ)をノの部分にひっかけ、そのほかの服もたんたんと干していくのである。(やっぱ、完全に意識ないんだな。都会ではという前に、正常な感覚を持つ女の子だったら、洗濯物を外に干す以前に、男の目線に入っても嫌だとかどうか、っていう神経が・・・)と俺も発達障害を疑った。俺はその時、仕事が休みだったので既に酒を飲んでいた。昼から酒なんていったら、俺の私生活を疑われるかもしれないが、基本的に俺は、前回の投稿では晩酌という言葉を使ったものの、夜はあまり酒を飲まない。(前回の投稿の時は飲んでたけどね)どちらかというと、昼間に酒を飲んでメシを食って、それから昼寝をしてから夜に起きて、また少しなにかをしてから寝るのが俺は好きなのである。なぜなら、俺は夜に酒を飲んだ時の、あの翌日の独特の気怠さが俺は嫌いで、肝臓に充分なアルコール分解の時間を与えたいという発想から、俺は基本、昼のみしかしない。(それに好きな刺身のアテは、夜のスーパーには売ってないし)なので俺はその時、ほろ酔い気分で話し相手もほしかったところだし、適当に会話をつなぐ意味で、「佐藤さんはやっぱマメに掃除したりする人なのかな?」なんて聞いてみた。そんなどうでもいい会話が出てきたのは、俺がさっき、部屋でネットしながら酒を呑んでいたら、上の403号室から、ブーーーン ブーーーン という掃除機の音がけたたましく鳴っていたからである。佐藤さんは「掃除ですか?」と聞いてきたので、「うん。いつも朝はちゃんと掃除機かけてるよね」と俺は言った。すると佐藤さんは「もしかして、掃除機の音がうるさくて困ら
...省略されました。