いまから7~8年くらい前の話。
俺は奈良県の在住なのだが、高校卒業後、大阪にあるぶっちゃけしょうもない2流の大学に入学したのだった。
入学前からは、親には「大学に入ったらひとり暮らしをさせて欲しい。ちゃんとバイトもするから」という事で、学校からわりと近い場所に8畳のおんボロアパートを借りてくれた事によって、俺は念願の大学進学と、ひとり暮らしを叶えることが出来たのだった。
そして俺は、大学の初の行事である入学式の時、親には「もう中学や高校じゃねんだから、ひとりでいいよ」と、親は入学式には来なかったが、その入学式に俺のこの、4年間の大学人生をかえてしまう存在が来ることになるとは思ってもいなかった。
入学式当日、俺は大学へ行き、ボランティアの大学の先輩方の案内に従って大学内の入学式の会場であるコミュニティホールに入ったとき、先着順に前の席から詰めていっったのだったが、その俺の斜め前に座っていたのが、これから話をする主役となる、中村優紗だった。
俺はその中村優紗(以後、ユウサ)を見て、俺はぶっちゃけ、一目惚れをしたのだった。
肩より少し長いキレイな黒髪のストレート。細い体躯に似合わぬ突き出たふたつの胸。おとなしくも、優しそうな表情、大和撫子を彷彿させる清楚さ、、、 なんというか、、和風の妖精。そんな感じを彷彿させる雰囲気をもった女性、いや当時は18なので女の子。といったほうが正解か。
俺はその可愛いとか、キレイとか、そういう次元ではなく、「俺のタイプ過ぎる」といったほうが正解か、そんなユウサに入学式の初見で一目惚れしてしまい、それから俺の大学生活は恋煩いの大学生活となっていくのだった。
この話は偶然に偶然を積み重ねるストールになると思うのだが、まず最初の偶然は、俺とそのユウサは、同じ学科だった。という事。
そして俺はいつも、選択授業のときはそれぞれ任意での授業を受けるので離れることもあったが、必修科目だけは同じ学科なので必ず同じ教室で受けることになるのだが、俺や、そのツレたちがいつも陣取る教室から左後ろの席の前に、ユウサやその友達がいつも座っていた。
俺はユウサに対してマジ惚れしているのに、彼女の前では緊張しまくって、まともな会話も出来ない状態になっていた。
そんな奥手な俺はユウサに対し、いつも寝る前は(明日こそ声を掛けよう。メシいこう。って誘おう。)って心に決めているにも関わらず、絶対に翌日になったら、近い距離にいるのに、今日は席が隣なのに、、あらゆるチャンスを無駄にし、俺はユウサからとって、「同級生」以外になにものでもない立場に甘んじているのだった。
俺はユウサに近づく為に、あらゆる策をとった。ユウサと同じグループの女子の、「みーたん」っていう、かなりデブい女子に、「今度みんなで飲みにいかないか」と、暗にユウサ目当てで声かけてみたり、おなじくユウサと同じグループの「せーな」っていうスタイルはいいが、顔はかなり不細工の女子に「なんかイベント企画しない?」と声をかけたり。
しかし、すべてが不毛に終わった。
俺は自分で思っているより、真剣に。そして誠実に。俺は一目惚れという、一見軽いと思われるきっかけかもしれないが、真剣に学校で少し話して、少し触れ合う程度の存在のユウサに恋心を抱いていたのだった。
ユウサに恋を抱いたのが春。そして季節は夏になっていた。
俺は来る日も来る日も、ユウサのことを考え、「明日こそは・・」と思いながら、季節は夏になろうとしていた。
俺は学校が休みの夏休みとなれば、まるまる大学の夏休みの期間、まったくユウサと会えなくなってしまう。俺は(絶対に夏休みが始まる前に、ユウサをデートに誘う!!!)と、いつもより硬い決意をし、俺は夏休みの前の授業に出るのだった。
そして俺は、さきほど述べた「みーたん」というでぶっちょの女の子に、これもユウサ目当てで、「みーたんw 夏休み海とかみんなでいかね?w」と軽く話をふったとき、みーたんからおそるるべき答えが帰ってきたのだ。
「みんな彼氏いるからなぁ~」
俺は(へ?) ってなった。そしてみーたんに、「彼氏いる?ってどういうこと?w」と聞くと、みーたんは、へいへいと、「ユウサもせーなも彼氏サンとラブラブだから、誘ってもこないと思うよ~」と言ってきたのだった。
俺はその言葉に衝撃を感じたが、なんとかそこは冷静をとりつくろい、「あ、そうなんだw みんな彼氏いるのかー」と答え、「ユウサちゃんとか、彼氏いたんだね。地元の子?」みたいな感じで話を降ったら。。。
「ああw なんか本人らは付き合ってるの隠してるとかいってたけど、、向こうにAっているでしょ。(教室の片隅に目線を送る)アレがユウサの彼氏だよ」
と言われたのだった。
そのAというのを紹介しておく。
むろん、俺と同期なので俺も知っている。なにげに男前っぽいが、俺からしたら気に入らない奴だった。俺らの男子グループとは別のちょっと調子にのってチャラチャラした男どものグループのリーダー格であり、いろんな女子に何気なく声をかけているナンパ師っていうイメージが先行するような奴だった。
しかも、このAは、俺がすんでるエレベータなしの5階建てのアパートの2階に住んでいる奴なのである。
そしてさらに、その後に聞いた情報によると、ユウサを口説いたのもAのかなり強引なまでのアプローチだったという。デブのみーたんも、不細工のせーなも、ユウサからこのAからの猛烈なアプローチに相談をかけたらしいが、みーたんもせーなも、「そこまでアナタの事を大事にする。っていうんだったら、お試し期間でももうけて付き合ってあげれば?」とアドバイスをしたらしい。
俺はその情報を聞いてから、俺は恋煩いがら、、もう失恋した人間なら誰でもわかる感覚だと思うので簡単にいうと、一気に「暗黒の毎日」に突入してしまったのだった。
俺はそれからおかしくなった。
なまじ、そのAが俺のすんでるアパートの2階に住んでいるものだから、俺は事あるごとに、自分の部屋にあがる途中にある2階のAの家のドアの前にたち、こっそり鉄扉のポストの隙間をあけて、(ユウサきてたりするのかな。。)なんて思いながら、Aの野郎の家をのぞき見するっていうか、そんなやっても利益もない事をやっていた。
毎日、毎朝、毎晩、俺は2階のAの家を通るたびに、Aの鉄扉のポストの隙間をあけるわけだし、Aの家も俺と同じように8畳のなんの特徴もない四角い部屋だから、中の声とかはよく聞こえた。
そんな頻繁にAの家の玄関を覗くわけだから、結局、覗かなければよかったのに。という結論になる出来事に遭遇するのは必然だった。
あるとき、Aの家の玄関の新聞をいれる隙間を指でこっそり押して中をみていると、女の子がはくミュールがおいてあり、、中から女の子の声が聞こえた。
紛れもないユウサの声だった。
俺は(ドクン・・・)っていう、、緊張と不安がまじったような、けっして興奮でもなんでもない不快な心臓の重い鼓動を感じた。
しかも。
その会話をしているような声は一瞬で、、、その後直ぐに、、「あっ・・あっ・・・ あっ ・・・・ www あああん♪ もーwww 」 とかいう、なに楽しそうな会話と、、、そのあえぎ声が聞こえてきたのだった。
俺は、自分の沸き起こる嫉妬心、屈辱、悔しさ、無念、、、、あらゆる感覚が俺を攻めてきた。
正直いえば、Aに対し、、うらやみ、ねたみ、、、、、もうマグマのような嫉妬心を沸き起こしたのは言うまでもない。自分が入学よりずっと、真剣に好きだった子を、ふといきなり横からかっさらい、そして俺の部屋のすぐ下で、その憧れの子にいやらしい奉仕をさせているのだから。
俺はユウサのあえぎ声を聞き、なんども気のせいだ。と思いたかった。しかし、それは出来なかった。素直にもうあきらめて、、、、ユウサは俺とは縁がなかったんだ。 と思えればそれでよかったのかもしれないが、、そう簡単にいちど真剣に好きになった女を忘れれるほど、男である俺は出来てなかった。ある意味、、男だから、、未練たらしかった。女ならスパっと忘れれたのかもしれない。
なんと惨めな事か。野郎の家のドアのスキマをあけて、周囲をきにしながら聞き耳をたてている俺。 そしてそのユウサのあえぎ声を聞いたあと、我慢汁をパンツの中につくっている俺。 なんと惨めな事か。
そんな苦痛と屈辱の夏を過ごし、俺の心は、(もう、ユウサの事は忘れよう)と傾いていた。
しかし、学校が始まれば、また席が近くて優しく話してくれるユウサ、たまに俺が体調を悪そうにしているとき、フセンに 「だいじょうぶ?顔色わるいよ?」とか書いて渡してくれるユウサ。そんな彼女を俺は、忘れる事ができなかった。
そして季節は冬になっていた。もうAの家のベランダでは、日曜になると、おそらく前日から泊まっているユウサのものだろう、女性用の下着がベランダに干されたりしている光景をみても、俺は感覚が麻痺してなにも思わなくなっていた。しかし恋心が消えたわけではない。俺は直視したくなかったのだ。
が、
そんな俺に転機が訪れる。